セルフィーだけでは指導者になれず トルドー加首相に危機

カナダのジャスティン・トルドー首相(Photo by Drew Angerer/Getty Images)

トランプ米大統領の元顧問弁護士、マイケル・コーエンの証言を世界が信じられない思いで見守る中、隣国カナダでは別のスキャンダルが巻き起こった。

カナダのジャスティン・トルドー首相が司法長官に対し、建設大手SNCラバランの刑事事件に介入するよう圧力をかけたとの疑惑が浮上したのだ。年間売上高100億ドル(約1兆1000億円)、世界で5万人の従業員を抱える同社は、不起訴処分にならなければ本社を現在のケベック州から海外に移すと脅したとされる。

ジョディー・ウィルソンレイボールド前司法長官は先月28日、首都オタワの議会でこの疑惑に関する爆弾証言を行い、冒頭に次のように話した。「政府内の多くの人が、私のカナダ司法長官としての訴追裁量権の行使に対する政治的干渉を継続的に試み、SNCラバランとの訴追延期合意(DPA)を不適切に確保しようとした」

ウィルソンレイボールドは、政治家ら11人が昨年秋、SNCラバラン側に有利な決断を下させようと圧力をかけるため、複数の会合を開いたり、電子メールやテキストメッセージを送ったりしてきたと主張。ウィルソンレイボールドは司法長官として当然、なぜ自分には政治的介入なしに決定を下す自律性がないのかと疑問に思った。

ウィルソンレイボールドはまた、トルドー首相とのある会話に言及した。首相に対し、政府は司法長官としての自身の決定に政治的に介入しているのかと尋ねると、トルドーは「いや、違う。ただ解決策を見つける必要があるだけだ」と答えたという。

トルドーとその側近らの取った行動は、倫理規範を露骨に無視するものだ。カナダでは現在、憲法が危機にさらされていると言う人もおり、私の意見もそれに近い。

トルドー首相は2015年に選出されてからというもの、多くの国民の支持を集めてきた。若くて熱意があり、前向きで、前政権とは異なる新鮮で楽観的な空気を吹き込んだのだ。

その選挙活動の特徴は、政治的な計算と、セルフィー(自撮り写真)だった。実に多くのセルフィーが撮られ、トルドーの首相就任後もそれは続いた。だが、これは果たしてリーダーシップなのだろうか?

もちろん違う。数千枚のセルフィーを取ることはリーダーシップを発揮していることにはならない。これは首相に選出されるための活動のうわべを単に飾ったものでしかない。
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編集=遠藤宗生

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