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2019.03.05

マカオの「新世代カジノ王」が進める、日本のIR建設への準備

ローレンス・ホー(Photo by Jonathan Wong/South China Morning Post via Getty Images)

かつて「マカオのカジノ王」と呼ばれた、スタンレー・ホーの息子であるローレンス・ホーはアジアや欧州を忙しく飛び回る。マカオを中心にIR(カジノを含む統合型リゾート)施設を展開するメルコリゾーツ&エンターテインメントのCEOを務める彼は現在、日本進出に意欲を燃やしている。

世界のカジノ業界が10年にわたり働きかけを行った結果、日本政府は2018年7月にIR実施法を成立させ、国内3カ所までのIR設置が可能になった。ただし、政府は現時点ではどの企業に許可を与えるかを明確にしていない。ホーは決定が下るのは2020年以降になると考えている。

「この分野では十分な資金を持つ企業が、我々も含めて5、6社は存在する」とホーは話す。世界の主要なIR事業者にはメルコリゾーツ以外に、米国のラスベガス・サンズやマレーシアのゲンティング、マカオのギャラクシー・エンターテインメントがあげられる。

競合との戦いに備えるホーの準備は万端だ。彼は以前に、日本でのライセンスが得られるとしたら、100億ドル(約1.1兆円)程度の出資を行う用意があると述べたが、現在はさらに投資額を増大できると述べる。「上限は決めていない」とホーは話した。

日本進出を控えたホーは昨年、投資ポートフォリオの見直しを行った。現在42歳のホーは、ロシアでカジノを運営するサミット・アセントの全株式を売却した。後の報道でホーは、この株式売却の背景に、ロシアが長年にわたり日本と領土問題を抱えており、クリミア併合に関し国際的非難を浴びている問題があったと述べたという。

昨年6月にメルコリゾーツは、マカオのコタイ地区に11億ドルの巨費を投じた新ホテル「モーフィアスタワー」をオープンさせた。「我が社がこれまで手がけてきた事業を、IRの成功事例として日本にアピールしたい」とホーは話す。

モーフィアスタワーの設計は、東京の新国立競技場の当初案をデザインしたことで知られる、故ザハ・ハディドが手がけていた。

既に大阪オフィスも開設

メルコ社は2018年にキプロスでのカジノ運営に関する、15年間の独占ライセンスを取得。7億ドルの費用を投じ、欧州最大のIRリゾートに拡大することを目指している。また、2015年にはフィリピンのベル・コーポレーションと組んで、マニラにシティ・オブ・ドリームスを開設していた。

ホーにとって日本は今後の巨大な成長が見込める市場だ。しかし、日本でのIR開設に向けての、ライセンスの付与数には限りがある。

そんな中、ホーの強みとなるのは、彼が中国の商工会議所的な位置づけの「中華全国工商業連合会(All-China Federation of Industry and Commerce)」のバイスチェアマンを務めていることだ。ホーは自身が中国と日本をつなぐ役割を果たせると述べ、「これは我々にとってのアドバンテージとなる」と話している

メルコリゾーツは昨年4月に大阪オフィスを開設し、ホーはマカオと大阪間を頻繁に行き来しながら日本でのパートナー企業の選定にあたっている。現地での協業先の獲得は、同社が日本でライセンスを獲得した際の事業の効率化につながる。

日本でのIR事業参画が決まれば、メルコの本社を日本に移転させる用意もあると、ホーは述べている。

編集=上田裕資

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