アマゾンの産業医に聞いた「折れない心の作り方」

アマゾンジャパン産業医の鈴木英孝先生


人事部・ジャパンコーポレートディレクター、上田セシリアさんにも話を伺った。

──メンタルヘルスをキープするために、社員の方たちにしているアドバイスはありますか?

私は、社員にはいつも「会社で自分自身を発揮できるようにする」と言っています。

アマゾンでは、リーダーシッププリンシプルという行動指針の一つである「オーナーシップ」を大切にしています。私たちは一人ひとりがオーナーシップをもち、お客様を起点に考え、行動することに責任を持ちます。会社で自分自身を抑えずに出すこと、そして仲間と協働することは、私たちが「世界で最もお客様を大切にする企業であること」というミッションを実現する上でとても大切です。

他によく言っているのは、「inner voice(自分の心の声)を聞きなさい」ということです。心の中が混雑していて、心配ごとや雑念でいっぱいになっていると、ポジティブな声が聞こえない。



私は誰の心にも、ポジティブな正解を知らせる「声」が響いているはず、その声が発するメッセージさえ聞き分けられれば、正しいことができると思っています。人にはそういう力がもともと備わっているんです。

──組織としての取り組みにはどんなことがありますか?

イノベーションを創出する場として、ウェルビーイング、ダイバーシティをキーワードにしています。中でもウェルビーイングは、社員の心と体の健康両方をケアすることですね。

まずはリラックスしやすい職場環境を整えています。フロアには緑が多く、運動器具もあるし、仮眠室もあります。また、フリーアドレス制のオフィスがあったり、フレックス制のチームがあったり、「ワーク・フロム・ホーム(在宅勤務)」を認めていたりと、本社勤務の多くの社員は仕事の状況に合わせて、働く時間と場所が最も効果的になるよう、自分でマネージしています。

それから、アマゾンではいろいろなことを「メカニズム化」しています。

たとえば、部下の仕事へのモチベーションを聞き取るためのトレーニングやコーチングなどのプログラムもその一つです。「何によってやる気が向上するか」などの質問がコミュニケーションのきっかけになって、相互理解や人間関係にもプラスになることもあります。

また、「強み」にフォーカスした評価方法を取り入れています。自己評価でも、同僚・部下・上司の評価でも、「より成長するためのアイデア」を提案はしますが、「弱み」は書きません。それが、ポジティブな対話につなげることに役立っています。

加えて、「チームインクルージョン」というワークショップも提供しています。このワークショップでは、各部署のリーダーがインクルージョンについて、チームメンバーとの議論をリードするものです。

たとえば、あるミーティングにたまたま呼ばれなかったメンバーが「自分は外された」と思うような状況があるかもしれない。このワークショップでは、チームメンバーのこのような声を聴くことによって、どうすればチームビルディングがさらに強化できるかを話し合う場を設けています。

ちなみに、私のチームでは在宅勤務の理由を言わなくていいようにしています。理由が「子供の病気」でも「ペットの通院」でも、メンバーが在宅を決めて仕事をするならそれでいい。理由に価値をつけないことが大事だと思います。

アマゾンジャパンには現在、50の国や地域からなる6000人以上の社員が働いています。それぞれのダイバーシティが十分に活かされてこそ、お客様へのイノベーションも生まれやすいと考えています。これからも多様な働き方ができる制度を整え、働きやすい職場環境を提供していきたいですね。

構成=石井節子

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