アマゾンの産業医に聞いた「折れない心の作り方」

アマゾンジャパン産業医の鈴木英孝先生


──「サザエさん症候群」とよく言われますが、日曜夜に憂鬱にならないために、週末はどうやって過ごすのがよいですか?

よくやるのは、週末に寝だめする、という方法ですが、実は寝だめに効果が乏しいことは、医学的にもわかっているんです。まあ、人によっては月曜くらいまで多少効いても、火曜日以降はほとんど期待できません。だから、実は週末にまとめて寝てしまうことは、とてももったいないことなんです。

だから、さっきの昼食の話ではないですが、やはり逆算方式で、週末に趣味や家族・仲間との時間を「あらかじめ」捻出しておく。そうすることで週末を寝だめに費やさないようにする。

平日、無理な仕事の仕方をして睡眠を削り、その結果、週末を寝て過ごすよりも、土日も平日と同じくらいの時間に起きて規則正しく過ごす。そうすれば、日曜の夜も平常心で過ごせるはずなんです。



──大学を卒業されて以降、産業医として長く、企業で働く人たちを見て来られました。相談内容は、どのように変化しているのでしょう?

産業医仲間の間で、最近は、職場以外での部下の様子を知らない上司が増えているという話がありました。個人情報に厳しいご時勢も手伝って、仕事以外の話、たとえば美味しいお店、スポーツやファッションのことなど、僕はそれを「ムダ話」と言っていますが、そういう話をする機会が少なくなってしまったのでしょう。みんな仕事の話はとことんするのですが。円滑なコミュニケーションのために、知っておいたほうがいい場合もあると思っています。

アマゾンには「コネクション」というフィードバックシステムがあります。毎朝PCを開くと、職場環境に関する質問が画面にポップアップするシステムで、匿名で回答を選ぶ仕組みになっています。回答は集計されて上司が見ることができます。この「働き心地のデータ化」は、巡りめぐって、回答した本人のプラスになっていると思いますね。

医師だってもちろん、心は折れる

──鈴木先生ご自身に「心が折れた」ご経験はありますか? そういう時に、どうしたらよいでしょう?

ありますよ(笑)。忙しくて鬱になりかけたこともあります。そんな時も、最初の自己肯定感の話ではないですが、やはり自分をよく見て、大事にする。だって、できないものはできない。そんな時は上手にあきらめる、逃げてもよいのです。

もうダメだと思ったら、とりあえずその状況から離れる、ということを心がけます。そして、安全な環境で自分を立て直して、現実的な問題解決を模索するんです。

体調や気持ちの具合が悪くなると、僕なら、ああ、教科書に書いてある通りだな、と思いますが、医学の知識がなくても、体からの「おかしいぞ」というサインに気づくことは可能です。朝の3時頃に必ず目が覚めてしまう、頭がぼうっとして人の「話」が「音」のようにしか聞こえないとかね。それを「おかしいな」とすぐに感じ取れる力をつける。繰り返しますが、とにかく自分のココロとカラダに関心を持つことが大事です。
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構成=石井節子

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