ビジネス

2019.03.11

日本人夫婦がバリ島から発信する「サステナブル経営」へのメッセージ

一般社団法人Earth Company代表理事の濱川明日香さん(右)とマネージング・ディレクターの濱川知宏(左)夫妻


── アースカンパニーは、ネイティブアメリカンの格言に基づいたビジョンを示されていますね。

知宏 : はい、私が10年程前に出会い、心に強く残った格言です。

「We do not inherit the earth from our ancestors. We borrow it from our children. (この地球は、先祖から継承したのではなく、私たちの子どもたちから借りているのだ) 」

「社会課題の存在しない社会をつくる」となるとイメージするのが難しいのですが、「この地球は子どもたちから借りているもの」と捉えれば、誰でも具体的に何をすればよいのか頭に浮かぶ。とにかく少しでも良い状態で子孫に残したいと思うはずです。この言葉は、私たちの活動のコンセプトを示すうえでキーとなる考え方です。

── お二人が活動拠点としているバリは、アースカンパニーをはじめ、世界中から社会起業家が集まる場所になっていると聞きます。何がそういった人たちを引き寄せるのでしょうか。

明日香 : バリの人々はとても敬虔である一方で、自らの考え方ややり方に当てはまらないものを排除することをしない、寛容な姿勢を持っています。新たな人やビジネスやアイデアも、とりあえず受け入れてみる。島の人たちが持つオープンな世界観に、社会起業家が集まる大きな理由があると思います。

── バリの人々のオープンな世界観は、どこから生まれてくるのでしょうか。

明日香 : バリの人々は自然、人、神々との調和を意味する「トリ・ヒタ・カラナ」を何よりも大切にします。人の心や精神、愛、絆、人や自然との繋がりなどを追求することは、先進国の社会、とくにビジネスの場では「きれい事」とされがちですが、これらは人生のコアとなる要素です。本質的な価値をないがしろにしないバリの文化が、オープンな世界観を生んでいるのだと思います。

── 僕自身もインパクトバリの研修に参加して、これまでの価値観がひっくり返りました。事業の面でも、経済効率性を追求するより大切なことがあると気づき、会社のビジョンをより明確に示すことにもなりました。インパクトバリへの参加者の人たちは、どのような反応を示していますか。

明日香 : アースカンパニーが存在する理由、そして描く未来、すべてに通じるのは「地球は1つの生命体」という考え方です。地球上に存在するあらゆるものは1つの細胞、生命体をつくり上げるピースなのです。しかし、いまは人間というピースだけがポンと突出していて、地球という生命体を脅かす存在となっているような感じがします。

インパクトバリでは、社会変革を志す次世代リーダーの育成を目的としたソーシャル研修を行いますが、バリでは、こうした「きれい事」として埋もれてしまいがちな大切なことと、きちんと向き合うことができます。

だから研修後、個人として、企業として(自分の役割は何だろう)と模索しながら帰路に就く人が多いように思います。参加者にとって、インパクトバリがアクションを起こすきっかけとなれば、とても嬉しく思います。


インタビュアーの「ナオライ」三宅(写真中央)もインパクトバリに参加。研修期間中は、現地でソーシャルな取り組みを行う団体を多数視察した
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監修=谷本有香 インタビュー=三宅紘一郎 校正=山花新菜 撮影=藤井さおり 取材協力=Nagatacho GRID

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