ビジネス

2019.03.11

日本人夫婦がバリ島から発信する「サステナブル経営」へのメッセージ

一般社団法人Earth Company代表理事の濱川明日香さん(右)とマネージング・ディレクターの濱川知宏(左)夫妻

利益向上、市場拡大、株価上昇と、目に見える数字ばかりを追い続けることが、必ずしも「正解」として求められることがなくなってきた昨今。これからの組織、そして、私たち個人の在り方はどう変わっていくのだろうか?

そのヒントを探るべく、日本の酒蔵の多様性を引き継ぐことを目的に、事業展開を進める「ナオライ」のメンバーが、これからの社会を創るキーパーソン、「醸し人」に迫る連続インタビュー

第3回は、インドネシアのバリ島を拠点に未来を創る変革者たちへの支援を提供し続ける、一般社団法人Earth Company(アースカンパニー)代表理事の濱川明日香さんとマネージング・ディレクターの濱川知宏さん。ダライ・ラマ14世により、日本人として初めて「Unsung Heroes(謳われることなき英雄)」を受賞した二人が目指す世界とは?


── お二人がバリ島で運営するアースカンパニーの事業内容にはとても興味深いものを感じます。

明日香 : アースカンパニーは、主に3つの事業を行っています。1つは、並外れた変革力を持つ社会起業家の支援を行う「インパクトヒーロー事業」。2つ目は、バリ島のウブドを拠点に、社会変革を志す次世代リーダーの育成を行う「バリ島ソーシャル研修事業(インパクトバリ)」。そしてもう1つは、社会変革へ挑む組織にコンサルティングやアドバイザリーを提供する「インパクトコンサルティング事業」です。

私たちは「次世代に残せる未来の創造」をめざしています。そのためには、個人の意識改革や社会の変革を担える人材が増えること、そして企業が人や社会や地球の発展に寄与する形で利益を上げるビジネスモデルへとシフトしていくことが必要。私たちは3つの事業を通じて、これらにアプローチしていきたいと考えています。

── アースカンパニー設立の経緯を教えてください。

明日香 : 設立のいちばんのキッカケとなったのは、東ティモール出身の女性、ベラ・ガルヨス(Bella Galhos)さんの存在です。彼女とは、私がハワイ大学の大学院で、太平洋島嶼国における気候変動を研究していたときに出会いました。


彼女には、壮絶なライフストーリーがありました。東ティモールがインドネシアによって統治されていた時代、彼女は少女兵として祖国の独立運動に身を投じていました。度重なる弾圧に耐えて戦っていましたが、ついには亡命。以後、カナダから運動を続け、東ティモールの独立に貢献しました。

そうして培われた彼女の変革力やリーダーシップ、カリスマ性には卓抜したものがありました。自国の課題をどう捉えているのか。どんな未来を描いているのか。何度も私たちは語り合いました。そして、彼女が何か大きなチャレンジをするときには、全力でサポートすることを心に決め、大学院卒業後も活動を遠くから見守っていました。

その後、彼女は東ティモールの大統領補佐官に抜擢され、祖国の復興に従事することになります。とはいえ、東ティモールは450年間にわたるポルトガルによる統治後、24年間インドネシアに支配されており、その間に何度も残虐な戦いがあり、暴力が常態化していました。そのため、祖国はすっかり「育む力」を失っており、彼女は大きな危機感を抱きます。国を再興させようにも、圧倒的に人材が不足していました。

外国からの支援機関の手を借りて、トップダウンの政策を行っても、本当の意味での建国にならない。まずは若い人たちを教育しないとこの国の未来はない。そう感じた彼女は、青少年に自然環境と共生する重要性とその方法を教育するため「グリーン・スクール(環境教育学校)」を立ち上げることを決意したのです。それを聞いたとき、私は彼女をサポートするのは、今しかないと思いました。

私は、国際支援に携わるなかで、ベラさんに限らず、圧倒的な変革力を持つ人たちに出会ってきました。もちろん海外からの支援も必要ですが、その国の課題や背景、歴史や文化を深く知る現地の人たちが自ら変革を起こし、未来を創っていくに越したことはありません。だからこそ、そうした人に寄り添い、共に歩むかたちで支援をすることが、私たちの役割だと感じています。
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監修=谷本有香 インタビュー=三宅紘一郎 校正=山花新菜 撮影=藤井さおり 取材協力=Nagatacho GRID

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