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2019.03.09 13:00

旧ソ連ジョージアで「至高のワイン」を作り、伝統を守り続ける女性醸造家

NatashaPhoto / Shutterstock.com

ジョージア西部のイメレティ地方オブチャ村に広がる、約2.8ヘクタールのブドウ畑──。そこでは、土着品種のブドウが農薬や化学肥料を使わずに栽培されている。ブドウはやがて収穫され、地中に埋められたクヴェヴリと呼ばれる素焼きの土壷の中で発酵し、ワインに姿を変える。

フォーブスの2019年度の欧州版「30アンダー30」の一人であるバイア・アブラゼは、25歳のワイン醸造家だ。

アブラゼは首都トビリシの大学を卒業後、地元に戻り、2015年から伝統的なクヴェヴリ製法によるワイン造りを始めた。自身の名を冠した「Baia’s Wine」は今や、ジョージアワインを求める米国のワイン関係者に最も人気のブランドの一つである。

「私が古くから伝わる醸造方法やルールを守っているのは、(先人たちは)土の重要性をはじめ、何を大切にすべきかを知っているから」とワイン醸造一家の4代目であるアブラゼは言う。

昨今、バイオダイナミック農法(農薬や化学肥料を使わず、動物と共生し、月やその他の天体の動きに基づいた農業暦に従う自然農法の一種)で栽培されたブドウを使ったバイオダイナミックワインが注目を浴びている。

アブラゼは祖父から、ブドウの剪定や収穫は月の満ち欠けに合わせて行うべきだと教わった。「月に従うやり方は本当に素晴らしい。私たちは特別な機械も持っていなければ、安定剤などの添加物も使わない」とアブラゼは語る。

Baia’s Wineのワインは4種類あり、いずれも土着品種のブドウから造られる。ツォリカウリの白ワイン、ツィツカとツォリカウリをブレンドした白ワイン、オツハヌリ・サフェレの赤ワイン、そしてツィツカとツォリカウリとクラフナの3品種を皮と一緒に発酵させた褐色の白ワイン。4つ目のワインが最も有名だ。

顧客はワシントンDCの高級レストラン

2018年の生産本数は7500本。アブラゼが同年2月に米国での販売を始めると、顧客の大半がワシントンDCのレストランになった。その中には、グルメ雑誌「Bon Appétit」の2018年版ベスト・ニュー・レストランで全国第2位に選ばれた高級中東料理レストラン「Maydan」や、「ワシントン・ポスト」紙で2018年版DCのレストラン第4位に選ばれた日本風レストラン「Himitsu」など、話題の気鋭店が含まれる。

Himitsuの共同創業者で、昨年度のフォーブス「30アンダー30」(飲食部門)の一人でもあるカーリー・スタイナーは、Baia’s Wineの魅力を「他のどのワインとも似ていないフレーバープロファイル」だと語る。

「タイムなどのハーブの香りの中に旨味と塩辛さがあり、Himitsuの料理に完璧に合う。ジョージアの人々は、今トレンドの自然派ワインやバイオダイナミックワインを大昔から作っていた。伝統と今どきの親しみやすさを併せ持つアブラゼのワインは、ジョージアワインの模範的な例と言える」

アブラゼの今後の課題は、需要の高まりにどう応えるかだ。アブラゼは近く15エーカーの土地を購入することになっており、今年は9000本の生産を目指す。伝統は守り続ける。

「村で暮らすことは時代から取り残されることだと思う人は多い」とアブラゼは話す。「私たちはこんなに誇りに思っているのに」

編集=海田恭子

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