「職業人生50年時代」を乗り切る、8つのキャリア・アンカーの確認

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人生100年時代といわれている。20代前半で社会人となり、70代まで仕事を続けるとすれば、私たちと仕事の関わりは約50年間となる。そんな「職業人生50年時代」において、誰もがどこかのタイミングで、自らのキャリアに悩む「キャリア迷子」を経験する可能性は、極めて高いといえる。

「人生これでいいのだろうか?」「この仕事は自分に向いているのだろうか?」「いま就いている仕事は、本当に自分がやりたかったことなのか?」こんな気持ちになっている人も、多いかもしれない。では、どうしたら、このキャリア迷子から脱することができるのだろうか。

「キャリア・アンカー」という言葉をご存知だろうか。

アンカーとは、船の「錨」であり、停泊する際に水中にしっかりと下ろすことで船を安定させるものだ。「キャリア・アンカー」とは、キャリア教育の権威であるエドガー・シャイン(Edgar Schein)氏が生み出した言葉で、個人のキャリアのあり方を導き、方向づけ、その「拠り所」になるものとされている。

どのようなアンカーを持つかは個々人によって異なるが、その方向性に合った仕事をしていれば充実した気持ちになるし、それに合っていない仕事をしている場合には、キャリア迷子になってしまう。

例えば、社会貢献を望む人が医師の職に就いていればハードな状況にあってもやりがいを感じることができるだろうし、リスクをとって新しいことにチャレンジすることを望む人が単調な仕事に就いていれば不満を抱えることになるだろう。

シャイン氏は、「キャリア・アンカー」を、自らが何を望んでいるのかによって、次の8つに分類している。

1. 技術・専門性(仕事に没頭し、専門性や技術力の向上を望む)
2. 経営・組織管理性(昇格や昇進し、組織の中で責任ある立場に立つことを望む)
3. 自立・独立性(自分で独立して仕事をすることや時間的に自由に仕事をすることを望む)
4. 保障・安定性(雇用や身分が保証されているなど、キャリアの安定を望む)
5. 起業・創造性(新しいものを生み出し、クリエイティブに仕事をすることを望む)
6. 社会貢献性(自分が社会の発展や周囲の役に立っていると実感できることを望む)
7. 純粋な挑戦(不可能と思えるような挑戦や課題を解決することを望む)
8. 生活様式(仕事と家庭、公的な時間と私的な時間など、適切なバランスを望む)

近年は「働き方改革」が世の中のトレンドになり、ワークライフバランスという言葉もずいぶん定着してきたが、仕事と家庭の調和を求める人のアンカーは、「生活様式」だろう。また、研究技術者や専門職なら「技術・専門性」、社長や経営管理職なら「経営・組織管理性」というアンカーとなる。職業や職種によってアンカーは異なってくる。
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文=林久美子

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