日本でIoTがなかなか広まらないのは、先進的技術の支えがないから

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IT市場の歴史を少し違う角度で見る(分散と集中の歴史)

私自身のキャリアは、古くは80年代のメインフレームの時代に遡ります。IBMの技術(と特許)が市場を独占していた時代からはじまり、オフコン、UNIXワークステーション、Windowsクライアントサーバクラスタ、仮想化記述、クラウド、そして今日話題になっているコンテナ/Kubernetes、とITインフラのコア技術が変遷してきました。

非常に興味ふかいのは、図に示すように、それらのインフラ系の技術は、分散と集中を繰り返す歴史をずっと辿ってきたことです。「分散」と「集中」は次のように定義されます。



・分散:通常、ベンダーによって構成される標準化団体が共通仕様を策定し、それを複数の企業が各々の事業としてその仕様を基本技術として製品ソリューションに採用する、というモデル。標準化により業界全体に平等な機会を提供する一面、各社の思惑も要因となって、技術の進歩が遅まったり、場合によっては互換性があまり保証されないまま推移するケースがあります。

・集中:特定の企業が独自に開発した技術をもって市場のかなりの規模を独占するモデル(例:マイクロソフトが95%のデスクトップ市場を独占していた1990年代)。他のベンダーはその特定企業の独自仕様をライセンスし、同等の製品を提供するか、もしくは完全に市場から締め出される等の動きが発生します。特定企業が独自仕様で市場を牽引するので市場形成のスピードは早いですが、当然ながら一社寡占の状況は色々な面でひずみを生むことは歴史的に証明されています。

現在、巨大な市場シェアを持つAWSがほぼクラウドの市場を独占している状況が続いています。その上位のレイヤーに業界標準としてコンテナの仕様であるOCI(Open Containers Initiative)と、Kubernetesの標準仕様であるCNCF(Cloud Native Computing Foundation) が広く業界にオープンソースとしてその技術を提供しています。

時代が進むにつれ、分散から集中へシフトするペースが早くなってきている、という点も特徴であり、今後もそのスピードが早まることが想定されます。次にどのような技術が市場を席巻するのか、大変興味ふかいところですが、このパターンでいくと、特定の企業が何か新しいインフラのフレームワークを出してくる、と想定されます。

何れにしても、このペースでいくと、思ったより早く登場する事も意識しておいた方がいいかもしれません。

文=鈴木いっぺい

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