日本でIoTがなかなか広まらないのは、先進的技術の支えがないから

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数年前から大きく話題になっているIoTの日本国内での急激な広がりは、「スイッチが入るまで時間がかかるが、一旦火がつけば全国的に燃え広がるのは早く、あまり疑問を持つことなく定着する」日本の典型的な例です。

IoTは欧米市場で生まれ、製造業を中心に大きく話題になりましたが、日本では少し時間をおいて登場し、急激にIoTが注目され、製造業界に限らず広範囲は市場に展開されてきました。

日本に住む私の父は今年で84歳になりますが、引退して久しい父親でもIoTのことをよく語っていて、キーワードとしての認知度の高さに驚いてます。

一方、日本国内のIoTが欧米と比較して立ち遅れている、とよく話題に上がってきます。総務省が2017年に発行した「第4次産業革命における産業構造分析とIoT・AI等の進展にかかる現状および課題に関する調査研究」でも、IoTは用語としては広まりながらも、実際には通信業と一部の製造業での実績に限定されている点、ビッグデータ、AI、等、IoTを構成する技術の理解/普及が他国と比較して非常に低い、という点が指摘されています。

前回提示した日本型ハイプサイクルに、IoTと関係する基礎技術をマッピングすると、次の図のようになると思います。



IoTだけ先行して短期間の間に流行期に突入し、次世代を担うソリューションやビジネスとして話題を集めました。

現実的には、IoTというものは既存のレガシーなITインフラの上に作り上げるのでは、性能面、コスト面、可用性面、継続性、等の面で課題があり、実装しても非常に限定的な使い方を強いられるため、ビジネス的な導入効果はあまり期待できないことはわかってます。日本国内でも、既存の技術でIoTを実装したがために失敗した例が数多く発生し、総務省のレポートでもその問題が指摘されています。

IoTは発想自体はイノベーティブではなく、コンセプトとしては30年前のFA(Factory Automation)の時代から存在しているソリューションです。工場内の機器にセンサーを設置し、運行状況の監視をNECのPC9800で行うシステムも広義の意味ではIoTです。

当時の技術では現在期待される広域で大量のデータをリアルタイムで処理するIoTシステムは技術的に実現不可能だったため、そのレベルでとどまっていただけの話なのです。

今日の欧米でのIoTシステムは、様々な次世代の技術をベースに構築され、それで初めて広域、高性能で大量のデータを処理できるわけです。やはり、総務省のレポートで指摘されるように、日本国内ではこれらの「支える」先進的技術の浸透度が非常に低いため、IoT自体の広がりが極めて限定的になっている、と言わざるを得ません。このIoTを支える技術は、まさに第1回で列挙したキーワードがそれに一致しますが、そのキーワードだけが先走りし、実際の導入があまり進んでいない、という問題が発生しているのです。

キーワードだけが先行する市場の危険性がよくわかる事例であることがよくわかります。
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文=鈴木いっぺい

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