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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信


米国政治はますます劇場化

残念なことは、今回の交渉を「経済封鎖」と「非核化」の取り引きだとわかりやすく米国のメディアは解説する一方、われらの同邦人が依然として北朝鮮に拉致されたままだという人権問題を取り上げるメディアが見当たらなかったことだ。

非核化は、わが国を含む世界平和に資することなので大切なことなのだが、同時に、現在も進行している北朝鮮の人権問題に、世界で最も人権護持の看板を掲げているはずの米国人にとってその認識は十分ではない。そのことに喚起を促すことこそ、米国のジャーナリズムの責務ではないだろうか。

自由を求めて国境の扉を叩く中南米人にあれだけ膨大なジャーナリストを派遣してカメラとマイクを向けながら、いったいどれほどの記者が日本と北朝鮮の拉致問題を知っているだろうか。

コーエンの証言は、そもそも偽証罪で有罪が決まっている人間の証言なので、もともと証拠能力に乏しいことは、共和党も民主党も織り込み済みだ。それでも、身内に悪口を語らせるエンタメ性をわかっていないわけではない。

しかし人類の歴史の1ページになりうる平和交渉の真っ最中に公聴会をぶつけ、交渉の代表当事者のことを詐欺師と言わせるほど、米国政治はますます劇場化し、そこには市民の平和も、拉致被害者の人権も不在であるように思う。

連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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