サントリーが昨年5月、熟成した原酒の在庫不足を理由に「響17年」と「白州12年」の販売休止を決めただけでも、十分に悪いニュースだった。
出荷の休止が新たに発表されたウイスキーの中には、日本市場のみで流通しているものもあり、国外の消費者には聞き覚えのない名前もあるかもしれない。
「角瓶」など人気銘柄も
サントリーは、ブレンデッドウイスキー「白角」の全ての容量のボトルと、シングルグレーンウイスキー「知多」の350mlボトル、ブレンデッドウイスキー「角瓶」の450mlボトル(日本で最も売れているウイスキーの一つ)の販売を休止する。
同社は世界各国の蒸留所と協力して新たに造った「サントリーワールドウイスキー 碧Ao(アオ)」の販売に力を入れているが、上記の銘柄の出荷休止も、その理由の一つと言えそうだ。
ニッカウヰスキーは、ハイクラスのウイスキーの中では買いやすい値段といえる「ザ・ニッカ12年」のほか、(ウイスキー専門のライターである)筆者のお気に入りでもある「カフェグレーン」と「カフェモルト」の出荷を休止する。
一方、ウイスキーブランドとしての海外での知名度がそれほど高くないキリンは、富士御殿場蒸留所で造る「富士山麓 樽熟原酒50度」の販売を終了する。
「悲報」続きではあるが─
このように、日本のウイスキーについては残念なニュースが続いている。さらに悪いことに、供給不足が解消されない中、業界の一部ではウイスキーに関する日本の規制が緩いことが悪用されている。実際には外国産のウイスキーを使用しているものや、ウイスキーを全く使用していないものが、相変わらず「日本産ウイスキー」として販売されている。
だが、日本のウイスキーの全てが失われたわけではない。ウイスキー業界が状況の改善に向けて努力を続ける中、私たちに必要なのは少しの忍耐力だけだ。
ウイスキー関連の情報を専門に扱うscotchwhisky.comは先ごろ、素晴らしい記事を掲載した。著者のデイブ・ブルームは、日本のブティック・ウイスキーの蒸留の「再生」について伝えている。
日本には現在、23の蒸留所がある。大半は小規模の新しい施設だ。その一部がすでに、少量のウイスキーを出荷し始めているという。
日本産ウイスキーは、大量に生産されている。それらにはただ、熟成するまでの時間が必要なだけだ。日本のウイスキーが再び世界の市場に戻り、スコットランドや米国のブランドと激しい競争を繰り広げるまでに、あと10年はかからないだろう。
それまで、新しい日本産ウイスキーを試すときには、しっかりと識別できる力が必要になる。中には価値のあるウイスキーもあるだろうが、恐らく大半はそうではない──。値上りが予想される年代ものの希少なウイスキーに、大金を払う用意があるというなら、話は別だが。