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Reporting on the science of human behavior

Photo by Ollie Millington/Getty Images

2010年に放送が始まった「ウォーキング・デッド」がシーズン9の中盤に突入した今、多くの人々が、心のどこかで世界の終わりに魅了されていることは明らかだ。

ゾンビ作品は近年の流行と思われがちだが、ホラーマニアの間では1932年の映画「恐怖城」がそのルーツとして知られている。また、1968年の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」もこの分野の記念碑的作品だ。

歴史を振り返ると、人類はいつの時代もこの世の終わりを詳細に描写した物語を語り継いできた。

シカゴ在住の臨床心理学者でゾンビ愛好家のJohn Mayerは、絶滅不安(annihilation anxiety)という用語で、人々の心理を説明する。絶滅不安は、オーストリアの著名な精神医学者のジークムント・フロイトが1926年に発表した論文で提唱した概念だ。

Mayerによると絶滅不安は死に対する恐怖とは違い、過去や未来が全て消し飛んでしまうことへの恐怖だという。Mayerと彼の仲間の臨床心理学者らは、2016年の米国大統領選挙以降に、終末論に取りつかれる患者が急増したと報告している。

「トランプが大統領になる前は、人々の不安は主に家賃が払えなくなることや、失業の恐怖から生じていた。しかし、その後は核戦争がはじまるなどの終末論に取りつかれる人が急に増えた」

Mayerによると同じ現象が過去にも発生しており、ゾンビブームと政治的な危機的状況との間には相関関係があるという。「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」が製作されたのは、キューバ危機で核戦争への恐怖が高まった1962年の数年後のことだった。

1985年公開の「死霊のえじき」も、米国とソ連の緊張の高まりの中で製作された映画だ。そして、2001年の同時多発テロの発生以降は、かつてない勢いでゾンビ系の終末映画が公開された。

2002年の「28日後」や「バイオハザード」、2004年の「ドーン・オブ・ザ・デッド」や2007年の「プラネット・テラー in グラインドハウス」などがその筆頭にあげられる。

「ゾンビブームの背景には、人々の不安がある」とMayerは話す。彼の理論では、人々はゾンビ作品をファンタジーとして楽しむことで、現実世界の不安から目をそらしているという。

一方で、社会学者のRobert Wonserは、ゾンビ作品の人気の高まりは、人々が政府などの社会システムに対する信用を失っていることの現れだと述べている。映画で描かれる疫病の大流行は、多くの場合、政府の管理体制の不備が原因となって発生する。

インターネットの普及とともに人々の不安は高まり、人々のゾンビに対する執着はますます強くなっていくとMayerは述べている。

「朝鮮戦争やベトナム戦争が起きた頃、米国人は戦争が遠くの世界で起きていると感じていた。当時は一般人が得られる情報も少なかった。しかし、ネットの普及によって世界は小さくなり、恐怖を身近に感じるようになった」とMayerは話した。

編集=上田裕資

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