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比喩にもならない、世界から取り残される日本

もう耳慣れてしまったキーワードをふたつ。デジタルトランスフォーメーション、デザインシンキング。これらは救世主並みの扱いで登場後、企業の規模・業種を問わず注目の的となった。

しかし、だ。掛け声ほどに実践できている企業は決して多くない。10年単位で比較した時価総額ランキングで見れば、GAFAに代表される世界の主役交代劇に対して、顔ぶれのほとんど変わらない国内のランキングが如実に日本の出遅れ感を表している。

いったい、何が足りないのか。何が間違っているのか。アクセンチュアのテクノロジーコンサルティング本部 インテリジェント ソフトウェア エンジニアリングサービスグループをリードする山根圭輔は言う。「日本に足りていない事例で言うとスポティファイモデルを活用した組織変革ですね」はい? あのスポティファイ? それが日本のビジネスシーンが変わるヒントというのか。

さあ、デジタル化時代の企業のあり方を議論しよう。

〈山根圭輔〉
アクセンチュア株式会社 テクノロジー・コンサルティング本部 インテリジェント ソフトウェア エンジニアリング サービスグループ統括 マネジングディレクター
金融業界を含む大規模プログラムの推進リードからアジャイル開発におけるスクラムマスターまで幅広く担当。アクセンチュアのNew ITを牽引する立場であり、世界中にあるアクセンチュアの研究機関や、日本の大学・研究機関と連携し、ビジネスに応用可能な近未来技術の特定、研究を行うアクセンチュア ナノ・ラボの日本統括を務める。

刷新した発想で、可能性を閉じないことが重要だ

新しいIT技術を取り入れた無数のサービスが世に放たれている。変革のスピードが加速し続ける中、ベンチャーから大企業まで、デジタル技術を活用したイノベーションを目指す企業は多い。

しかし、「これまでにない視点で顧客志向を目指そう」とデザインシンキングを取り入れても、実際にサービスを生み出し、リリースするところまで行き着くのは難しい。それはなぜなのか。山根は言う。

「デザインシンキングは、仮説のスタートラインにすぎません。仮説を立て小さくサービスを作って試し、顧客からのフィードバックをもとに細かくアジャイルに変更していく。これが必要なのですが───」

今、アジャイルという言葉が頻繁に使われるようになっているが、もはや特別なものではなく、「当たり前のもの」として山根は話を進める。

「アジャイルというのはアジリティのある開発=アジャイル開発から来ていますからどうしてもシステム開発について使われがちです。しかし、アジリティが必要なのは何もシステム開発の部分だけではなく、ビジネスそのもののアジリティを高めなければ、デザインシンキングの部分だけ変えて、他が今まで通りでは、システムやビジネス全体のアジリティは生まれません」

ではどうするか。そこでカギのひとつなのがDevOps(デブオプス)だという。Devは開発、Opsは運用を意味し、「システムの開発部門と運用部門の壁をなくしシームレスに連携する」ことを指す。今、最も必要とされる基礎的な開発手法だ。ただし、山根の言うDevOpsはその可能性を限定しない。

「今までのDevOpsの定義がシステムの開発と運用でしたから、間違ってはいないのですが、今はサービスデザインからリリースしたサービスを運用し、ユーザーの反応や離脱状況の分析、それを元にしたサービスの改善までが求められていますよね。スタートアップや大企業など企業規模に関わらずこの一連の流れをアジャイルに回さなければ、高速な意思決定につながらないのです」

規模が大きくなればなるほどDevOpsの仕組みが必要だ。サービスデザイン、システム、サービス運用がアジャイルで回り、サポート、分析の仕組みが備わって初めて判断がクイックにできる。

「例えば1年間アップデートされないアプリなんて、誰も使いたくありませんよね。ビジネスサービスはリリース後もアジャイルに育てていくものですから、つまり、DevOpsの仕組みがあって初めて、システムもサービスもアジャイルに推進できるのです」

総合力を持つ、開発の土台づくりを教えよう

ビジネスサービスを開発・運用する上で、DevOpsは必要不可欠な仕組みだ。しかし、カギのひとつと上述したとおり、山根はDevOpsをふまえた「全体像の重要性」を解く。

「デジタルトランスフォーメーションを目指して新たなサービスを作るには、ビジネスからシステムまで、さまざまなタレント=人材が必要です。プロダクトオーナーやサービスデザイナーといったものだけでなく──、

|ミニCEOとして、プロダクトの方向性の舵を取る プロダクトマネージャー
|顧客の分析から最終的な品質保証を担当するQA(Quality Assurance)
|サービスサイトの信頼性を高めつつDevOpsの運用や改善を行うSRE(Site Reliability Engineering)

といった具合に。加えて、こうした多様な専門性を持つ人材がタッグを組んでチームを作り、

⇒『デザインシンキングでサービスを企画するサービスデザイン』
⇒『そのサービスを簡易的に作って検証する』
⇒『実際にリリースして検証する』

というサイクルをアジャイルに回していきます。さらにサービス運用がそれをチェックしてフィードバックし、新たなサービスデザインをするのです」

なるほど。しかしそのような理想的な現場は存在するのか?

「これに近いケースとして、スポティファイモデルがありますね。あの音楽配信サービスのスポティファイが導入している大規模アジャイル・ビジネス手法ですが、このようなデジタルを活用したサービスを継続的に量産する体制を企業内に構築することが、日本の企業には必要と伝え続けています」
サービス企画からフィードバックまでのサイクルをアジャイルに回し、時代に則したデジタルを活用したサービスの提供を実現するための人材やケイパビリティは、日本企業にはなかなかいないのではないだろうか。

「そうなんです。そこでアクセンチュアではこうした人材のトレーニングや教育、必要となるケイパビリティの提供を行うことで、企業のデジタルトランスフォーメーションの実現を支援しています」

ビジネスサービスを新たに作り上げる際は、複数社が関わることになる。その場合はどのように推進していくのだろうか。

「アクセンチュアが手がけたふくおかフィナンシャルグループ様のiBank『ウォレットプラス』や第一生命様のスマートフォン専用アプリ『健康第一』などでは、海外のスタートアップからクラウド基盤の会社、基幹系のコアを手がける会社、サービスコンテンツを提供する会社など、複数の会社がこのプロジェクトに携わっています。また、こうしたサービスでは既存システムとの連携も必要になってくるため、アクセンチュアがアジャイル統合PMOとして取り仕切りながら、複数社にまたがるチームとプロダクトオーナー(クライアント)の間を取り持つのです」

▲事例ウォレットプラス
https://www.accenture.com/jp-ja/Careers/credential-strategy-ffg
▲事例健康第一
https://www.accenture.com/jp-ja/careers/credential-strategy-dai-ichi-life

多様な専門性と総合力により日本企業のDX=デジタルトランスフォーメーションを共に実現

様々なデジタルを活用したサービスを次々と生み出していく体制は、ベンチャー企業やフィンテックだけではなく、あらゆる業種に必要な仕組みだと山根は語る。

「製造業や通信ハイテク産業、究極のサービス業と言える官公庁でも求められており、こうした仕組みはあらゆる業種に必要なもの。今はプロジェクトの大小に関わらず、サービスをアジャイルに進めることが必須です。そこで必要なのは、AIやPRAといった最新技術を部分的に取り入れることではなく、サービスの開発から運用、フィードバックまでをアジャイルに行える総合力。それによって、デジタルトランスフォーメーション(DX)が実現するのです」

新たなサービスによりイノベーションを起こしたい。そう願う企業にとって必要なのは、これまでにないスクラムチームによる総合力だ。危機感を持った企業はすでにアクセンチュアとタッグを組み、デジタルを活用したサービスを継続的に量産できる体制を構築し始めている。ビジネス全体のアジリティを高める総合力でデジタルトランスフォーメーションを実現する動きは、今後ますます広がっていくことだろう。

アクセンチュア ナノ・ラボ
https://www.accenture.com/jp-ja/accenture-nano-labs

アクセンチュア DevOpsプラットホーム & ChtatOps
https://www.accenture.com/jp-ja/service-accenture-devops-platform-and-chatops