「ほめて伸ばす」といえば、一見簡単そうだが、実は効果的なものとするには、詳細な気配りが大切だ。いくつかの注意点を挙げてみよう。
1. 順位にはこだわらない
競争をさせて、成績が優秀だった人間がほめられるのは当然だ。しかしその際には、注意すべき点がある。賞レースのような順位がつくものは上位の入賞者ばかりにスポットが当たりがちだからだ。結果がすべてという考え方もあるが、順位を讃えすぎると、あとあと逆の結果を導いてしまうこともある。
たとえば、かつての成績優秀者が、順位を下げ注目されなくなると、以前より業績を落とし続け、スランプになることがある。こういったことを避けるには、数字だけを見ずに、プロセスを評価してあげるべきだ。
2. 何をほめるのか
ほめる前に、本人が努力をした結果なのかを吟味することも重要だ。わたしたちは無意識のうちに、まず相手の目立って秀でているところをほめる傾向にある。たとえば、本人にはどうしようもできないものでもあるが、生まれ育った環境や体躯、容姿に恵まれているといったことだ。ほめる前に、それを本人がそのことをどう感じているのかも考えたい。
いつもそのことを話題にされて、うんざりしている人間もいる。場合によっては、ほめたがために、相手から内面や内容を見てくれていないと思われる可能性だってある。できれば、本人も気づかないような優れた点を見つけて、ほめてこそ、あなたとの信頼関係は深まるのだ。
3. ほめる状況も考える
他のチームメンバーがいるなかでほめるときは、その人以外の心のうちも考慮したい。目立たなかったが、もっと頑張った人がいることを、メンバーが周知しているかもしれない。そんな状況でほめられては、かえって仲間から嫉妬されるということもある。それはチームに亀裂をもたらしかねない。ほめるときは、相手と1対1が基本だ。
私たちは、実は、人をほめるのは嫌いではない。相手に評価を下すことで、自分が少し偉くなったような気分になれるからだ。それで、安易にほめてしまうことも多々ある。
しかし、ほめ方は個々人でも違うし、シチュエーションでも効果はいろいろと考えられる。誰にでもあてはまる、ほめて伸ばす公式などあるはずがない。なによりも肝心なのは、相手のことを真剣に考えてから、ほめるという姿勢だろう。
連載 : 表現力をよくするレシピ
過去記事はこちら>>