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全豪オープンで優勝した大坂なおみ(Photo by Recep Sakar/Anadolu Agency/Getty Images)

テニスの大坂なおみ選手が1月の全豪オープンを制した試合後の優勝インタビューは、とても心に残るものであった。

まず、対戦相手のクビトバ選手とそのチームを称え、その後来場した観客や大会運営スタッフに感謝し、最後に自分を支えたチームをねぎらう。最後まで、自分自身のことは口にしない。グランドスラムを制して世界ランキング1位を獲得し自信に漲った状態にありながら、そこに自分がいない。

私はこの謙虚さに、真に学び続けられる人の姿を見た気がした。

自信に溢れてやること全てが上手くいく時、世界の全てが自分の手の中にあるような気持ちになる。私たちはその時世界に対して何か価値を生み出しているはずである。そのうち自分の成したことは自分自身に価値があるという考えに変化していく。

しかしその状態は長続きしない。時間が経つと、必ず正しいと思い行動していたことが少しずつズレてくる。そのことに気づくことはとてもタフなことだ。価値と自分が同化してしまっている中、間違えやズレに気づくことは自分自身を否定することになる。

学んでいる時、自分自身はそこにいない。自分は取るに足らない存在ということを受け入れ、周りで起こる素晴らしいことや尊敬に値することに感動し、自分もそうしたい、そうなりたいと素直に受け入れていく。そして今までにない価値観や能力を取り入れより高い所に自分を押し上げる。

本当に学び続けられる人とは、この自信と自己否定のタフな境界を何度も行き来できる人ではないかと考える。私は真のリーダーの姿をそこに見る。

組織のトップに立つのは、例外なく力と能力がある人だ。しかし、組織を持続的に上昇させられる人は少ない。多くは、成功した自分の能力や実績に酔い、組織と自分の成功を同化させる。組織員も心地よいカリスマ信仰の中に浸り、上位下達と忖度の中で自分の居場所を見出し始める。そういった会社は時代の変節とともに劣化し沈んでいく。

成長しつづける組織には、自信に溺れず、失敗に直面した時、自分を取るに足らない無知の人であるというレベルに引き戻せる謙虚さを持ったトップがいる。それは築き上げた成功に拘泥せず、常により高い価値に向かい、組織をそこへ向かわせる原動力になる。

謙虚さの源にあるのは、より深い自己肯定だ。自信満々の状態から自分を否定することを厭わないタフさを持ち、自意識の深い部分で自分自身を信任しているかどうか。

こうした自己肯定を持つ人は、自分の弱さに気づくことができる。弱い自分を認めながらも、それを克服しようという努力ができる。

この素養は、身近な人間からの深い愛情と、失敗経験の中で鍛えられる。何度も失敗し、自己否定の淵に立たされながらも身近な人の愛情に支えられ、新たな学びとともに復活する。そして、復活力を持つ自分自身にさらに肯定感を見出していく。この体験の繰り返しが謙虚さと学びへの懐の深さを創る。

もし、あなたが周りから認められず、やること全てうまくいかず、世界に自分が無視されていると感じている時、それは学びの力が試されている時ではないか。

そこから逃げて自分が認められる心地よい領域に逃げ込むか、自分の無力さを認めた上でそこに踏みとどまり、学びの扉を拓けるか。こういった選択に、成長し続け真のリーダーを目指せる人かどうかが現れる。

また、タフな選択ができる人は、その原動力をくれる身近な人からの無条件の愛情やサポートを感じ感謝することも忘れないものだ。

文=大庭 史裕

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