ビジネス

2019.02.28

ネットフリックスが世界を制したワケ──成長の立役者が明かす「パートナーシップの舞台裏」

ビジネス・デベロップメント ディレクター 下井昌人




従来の業界史における「イノベーション」とは、テレビに代表されるようなハードウェア自体に関わるものが主だった。しかし、ネットフリックスはプラットフォームビジネスの特性上、力点を変えて「ソフトウェアのイノベーション」にフォーカスする。

ネットフリックスは、業界で随一のモバイル利用中心型のプラットフォーム。この差別化と、10年にわたる多様な企業とのパートナーシップ、イノベーションの実績が強みだ。若年層のテレビ離れが進んでいる現代だからこそ、下井氏は独自のアドバンテージを活かし、業界で前例のないユースケースを実現しようと目論んでいる。

また、ネットフリックスの事業成長を支える要素として、優れたオリジナルコンテンツについても挙げておきたい。

「ネットフリックスは、もはやひとつの『エンタメのチャネル』といえます。映画スタジオように独自で手掛けたオリジナル作品が世界中で評価をいただき、配信コンテンツとしての価値が高まっているんです」

たとえば、代表的なオリジナル作品のひとつである『ハウス・オブ・カード 野望の階段』は、2013年に配信開始後、3つのプライムタイム・エミー賞を受賞。2019年にはオリジナル映画『ROMA/ローマ』がアカデミー賞候補にノミネートされている。

様々なジャンルの作品が配信される中、特にこのようなコンテンツは、パートナーシップにおいてアドバンテージとなる。主な提携先であるテレビメーカーが4K視聴という新たな映像体験を最大の訴求点とする今、世界最大規模の良質な4Kコンテンツライブラリーを有するネットフリックスは最良のパートナーと言える。

そしてもう一つ、家電メーカーの従来のビジネスモデルは、デバイスの機能性を上げながら、プロダクト単価を下げていかざるを得ないという構造的なジレンマを抱えている。

その突破口として注目されるのが、まさにこのような「インターネット接続でコンテンツビジネスを可能にする」プラットフォームだ。デバイスを購入したユーザーに対し、メーカー側は、ネットフリックスがもつ数ある栄誉(アカデミー賞、エミー賞など)に輝く圧倒的な4Kキラーコンテンツが視聴できるプラットフォームを抱き合わせ販売したい、という算段だ。

ネットフリックスがこだわり続ける「2つの体験」



「パートナーとの協働において、『Out Of Box Experience』の実現に注力しています。この言葉には二重の意味があり、視聴体験を得るまでのインターネット接続設定を含めたUX(ユーザーエクスペリエンス)の充実、そして、従来の発想では生まれ得なかった視聴体験を、我々起点で生み出していきたい」ということです。

ビデオ・オン・デマンドのビジネスにおいては、様々な顧客接点から「ネットフリックスで映像を観たい」という、モチベーションを引き出すことが重要だ。そのために、パートナーと協働しながら、双方が持ちうるオンライン・オフラインのチャネルをフルで活用し、ユーザーが購入に至るまでのプロモーションストーリーを描いている。
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文=梶川奈津子 写真=小田駿一

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