ミュージック・ビジネス・ワールドワイド(MBW)の試算ではユニバーサルミュージックのストリーミングの年間売上は、2018年に前年比39%増となり、初めて30億ドルを突破した。
ソニー・ミュージックやワーナーミュージックも売上を伸ばしたが、ユニバーサルの伸びは顕著だった。しかし、音楽業界のアナリストのMark Mulliganによると、ユニバーサルの親会社のヴィヴェンディが公開した資料で、音楽業界のアキレス腱ともいえるポイントが明らかになったという。
2018年にユニバーサルで最も売れたアルバムのランキングで、1位はドレイクの「Scorpion」、2位はポスト・マローンの「Beerbongs & Bentleys」、3位が映画「アリー/ スター誕生」のサントラだった。
そして、驚くべきことに4位にはビートルズの「ホワイトアルバム」が入ったのだ。ビートルズが今でもこれほどの人気を示していることは素晴らしい。しかし、世界の音楽業界にとって、これは果たして健全なことなのか。
ビートルズは他の現役アーティストと比べるとストリーミングの再生回数が非常に少なく、ほぼフィジカルのセールスのみで4位に食い込んだという。2018年は「ホワイトアルバム」の発売50周年にあたる年で、ユニバーサルは通常版を25ドルで、豪華版アルバムを145ドルで販売した。
CDの豪華版はレコードレーベルに莫大な収入をもたらす。Mulliganによると、レコード会社は通常のCDアルバムの場合、100万枚の売上から、卸売価格で750万ドルの売上を得られるという。しかし、「ホワイトアルバム」の場合は通常版を約50万枚、豪華版を7万5000枚売れば、同様な数値が達成可能だったという。
しかし、ストリーミング配信から750万ドルの売上を得るためには、6250万人がアルバムに収録された15曲を最低1回、再生する必要があるという。つまり、CDはストリーミングよりもはるかに儲かるのだ。
ストリーミングの売上は全体の4割以下
Mulliganはさらに、90年代半ばから2000年代初頭に活躍したアイドルグループのイン・シンクの例を引き合いに出している。イン・シンクの2000年のアルバム「No Strings Attached」は、年間900万枚を売り切った。そこから生まれた売上は、ストリーミングであれば6億人がアルバム全曲を再生し、85億回再生を達成しないと実現できない数値だったのだ。
CDの売上は下落が続いているものの、音楽業界は依然としてCDの売上に依存している。英国の音楽業界団体IFPIのデータによると、ストリーミングが音楽業界全体の売上に占める割合は、まだ38.4%程度だという。さらにいうと、昨年の物理的メディアの売上減少率はわずか5.4%であり、急落と呼ぶにはほど遠い下げ幅だ。
ストリーミングが支持を拡大し続けていることは確かだが、その売上がCDに取って代わるほどには伸びていないことも、また事実なのだ。