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LGBTからダイバーシティを考える


「ニコニコヘラヘラ」だけでいいのか?

杉山:ですが、僕も「太陽」のアプローチばかりの自分に少し反省していて。昨年、自民党衆議院議員の杉田水脈さんの「LGBTは生産性がない」という発言に対してLGBT当事者の方からの声が上がりましたが、あれは多分日本で初めて当事者がちゃんと「怒り」をあらわにした出来事となりました。結果的に、みなさんがLGBTについて考えるきっかけになったと思います。

僕の「LGBTのフェスティバルですよ!」という明るいアプローチによって効果もあったとは思いますが、一方でニコニコヘラヘラすることの限界も感じているんです。「マイノリティはすぐに怒るからまともに会話ができない」と言われることだってあります。

いまだに根強く残る差別偏見のせいで、同じような境遇の仲間が数え切れないほど命を落としているのに、それでもなおマジョリティの顔色を伺いながら「そろそろ差別をやめていただいてもよろしいでしょうか?」とへりくだらなければいけないのでしょうか。そんな悠長なことは言っていられません。

村本:「ニコニコヘラヘラ」と言う言葉は、いまの僕にグサグサ来ますね……。日本のお笑いはどうしても、「自虐」と切っても切り離せない関係にあります。

「自分はバカです」と言いながらならバカなことをするのは、罪だと思うんです。そのせいで、「こういうやつのことはバカにしてもいいんだ」と周りに思わせてしまうので。

杉山:自虐ネタはウケがいいし、他人はダメでも自分のことなら傷つけやすいという場合もありますよね。

また、「自分の傷で遊べるぐらいになって、初めて傷が癒される」という言葉を聞いたこともあります。自分の嫌な部分を隠しているだけでは傷は治らなくて、その傷口でいじって遊べるようになることで、初めて回復したといえる。この考え方にも、良い面と悪い面があると思いますが……。

村本:オーストラリア出身でセクシュアリティについてのスタンドアップ・コメディを演じるハンナ・ギャズビーは、「私はコメディをやめる。私は演じるたびにトラウマを呼び起こすことに、もう耐えられない」と言ったことがあります。

正直、僕はこの言葉がピンとこなかったんです。僕はお笑いのキャリア20年の中で、過去の恥ずかしかったことや嫌なことをネタにして繰り返し伝えているうちに、自分が肯定されていく感覚があったからです。

けれど、この前コメディに興味があるというLGBTの子と話していたら、やはり「自分のことを思い出してつらくなるから……」と語っていました。彼女たちと僕の思いがどれくらい違うのかはわかりませんが、「悲劇と喜劇はルームメイト」という言葉もあります。難しいですよね。

杉山:深刻になりがちな社会課題だからこそ楽しく伝えるべきである一方、それを強要しすぎることで、また当事者を傷つけることにもなりうる……。

正解はないのかもしれませんが、それでも多くの人に関心をもってもらえるメッセージの発信方法を模索したいです。

連載 : LGBTからダイバーシティを考える
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構成=野口直希 写真=小田駿一

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