物議をかもす発言がしばしば炎上する一方、お笑い芸人がなかなか触れない問題に切り込む姿勢が、芸人の枠を超えて注目されることも増えてきた。なぜ村本は、政治やマイノリティなどの社会問題について発言を続けるのか?
自身もトランスジェンダーで、昨年15万人を動員した日本最大のLGBTプライドパレードを運営するNPO法人・東京レインボープライドの共同代表理事を務める杉山文野が聞き手となり、全3回に渡り二人の対談を公開する。
誰だって「部分的なマイノリティ」なのだから、他人事ではない
杉山:僕と村本さんの出会いは、実はあまりポジティブではありませんでした。2017年に『とんねるずのみなさんのおかげでした』30周年スペシャルで「保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)」ネタについて、僕は当事者の一人として、「もっと想像力を働かせてほしい」とブログを書きました。
すると村本さんがツイッターで、「お前だけが被害者ヅラするな」と発言し、巻き込まれ炎上をしたんです。覚えていますか?
村本:もちろんですよ。
杉山:知らない人に突然怒鳴られたようで、最初は「この人は何を怒っているんだろう?」とあまり良い思いがしませんでした。ですが、ツイートを遡ると、村本さんが世の中の色々な問題と向き合おうとしているのが伝わってきました。
乙武さんなどもそうですが、多くの人が見て見ぬ振りを選ぶ中で、あえて触れづらいところに切り込んでいる方です。その後、AbemaTVなどで共演したりしているうちに、村本さんは優しい方なんだと思うようになりました。
村本:ツイートをする際もそうですが、僕はちょっと冷たい言葉を発してしまうこともあります。でも、こういう問題についてはずっと考えてきていて。
お笑い芸人にとって言葉は商売道具である一方、人を傷つけることにもなってしまう、とても扱いが難しいものです。普段から本当に悩んでいるんです。
杉山:村本さんがマイノリティの問題を真剣に考えようとしたきっかけはなんだったのでしょうか。
村本:僕もある部分ではマイノリティだからです。例えば、先日韓国に行ったのですが、韓国語がさっぱりで。駅の表示から看板まで全く理解できなくて、そのとき少しだけ日本国内で日本語が読めずに悩んでいる人の気持ちがわかりました。
自分が少数派になることがあるから、同じように傷つく人のことを想像しないといけないと思っています。