学校から教科書が消える? ビル・ゲイツの予言は正しいのか

ビル&メリンダ・ゲイツ夫妻(Photo by Michele Crowe/CBS via Getty Images)

ビル&メリンダ・ゲイツ夫妻が発表した今年の年次書簡では、夫妻にとって“サプライズ”となった9つのことが紹介されている。その中には、もしも本当に起きれば間違いなく教育現場に影響を及ぼすトレンドがあった。それは、「教科書は時代遅れになりつつある」というものだ。

この項目でゲイツは、コンピューターを使って大量に生成される個人特化型の学習により、従来の教育現場の要素が一部置き換えられる可能性を指摘している。彼はこう説明する。

「高校で代数を学ぶとしよう。方程式の解き方についての教科書の章をただ読むのではなく、オンラインで説明文を読み、とても引き付けられるような解説ビデオを観て、考え方を補強するゲームで遊ぶことができる。次にオンラインでいくつかの問題を解くと、理解が足りなかった分野に特化した新しい問題をソフトウエアが自動生成してくれる」

だが私は、今すぐ教科書の訃報を書く気にはなれない。その理由を以下に挙げよう。

1. コスト

米国の学校では、購入した教科書は何年も使い回す。ソフトウエアは一連のライセンスを毎年購入する必要があり、教科書を毎年新規購入するのと同じだ。このモデルはしばらく変わらないだろう。自分の手元に置いて好きなように使えるソフトを購入する代わりに、「サービス」に対する対価を支払うサブスクリプション方式は、企業の間で採用が進んでいる。

これは企業側にとっては理想的な収入源だが、学校側にとっては“教科書”を実質的に毎年再購入する必要がある上、生徒が教材へアクセスするために使用する機器(ネットブックやタブレットなど)の定期的な更新も必要となり、金銭面で大きな負担が生じる。

2. デジタル世代は無関心

これは複数の調査結果で示されているし、私も教育者として、生徒が紙の教材を好むこと実際に見てきた。国語の教師にとって、さまざまなテキストをオンラインで利用できることは真に画期的と言えるが、私の教え子たちは結局、リンク先のテキストを印刷して使っていた。古い人間が「この作業はボールペンを使えるのですごく楽しみ!」とは言わないように、デジタル世代はコンピューターを使った作業にはもはや関心をそそられない。
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編集=遠藤宗生

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