「イノベーターシップ」が組織を、人生を、社会を革新させる

(Ryouchin / Getty Images)


こうした「年だけ重ね社員」たちがくすぶっているような企業は、フロンティアスピリットがいまだ健在なアメリカや、躍動するアジアダイナミズムの中国、東南アジア、インドなどと比べ、イノベーション競争からはすでに周回遅れになっている。

それだけではない。今後はさらなる高齢化でますます戦局は不利になる。大企業の平均年齢を見るとすでに軒並み40代半ばになっており、係長や課長といった中間管理職になる年齢も、40代に上昇している企業が多い。団塊ジュニアの40代後半が固まっていることが一要因だが、この集団が10年後には50代後半になって企業にはより一層の重しとなっていく。

こういう状況を抜け出すために、人を大切にする日本企業は安易なリストラに走るべきではないし、少子化で若手が少ない中では、リストラさえ難しい。そこで再確認しなければならないのは、やはり社員一人ひとりが「年だけ重ね社員」にならず、企業のイノベーションに参画できるように危機感を持ち、鮮度を保つことだろう。

イノベーションは、アイデアの発想だけではない。そのアイデアを温めてビジネスモデルを構築する、エコシステムを創る、事業をしやすいように法規制を変える、投資家を惹きつける、新たな市場を切り拓く、新しい標準業務プロセスやマニュアルを作る、社内の抵抗を抑える……など多くのプロセスが必要になり、そこに多くの知恵が求められる。決して一握りのイノベーターたちだけでできるものではない。

そのようなイノベーションのプロセスに積極的にかかわりたいと思い、それぞれの場面で活かせる得意分野を持つ社員を育てていかねばならない。

その時に必要になるのはイノベーションマインドとイノベーションスキル、それが「イノベーターシップ」だ。それを筆者は、「熱い思いと実践知で現状を打破し、未来を創造していく力量」と定義している。

組織の持続的成長を達成していくためには、組織成員には強弱はあれ全員に必ず必要となる力だ。

今回の連載では、このイノベーターシップについて、様々な側面から論じていき、イノベーションの起こる日本に変えていく一助になればと思う。

文=徳岡晃一郎

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