2つ目の課題は「情報の非対称性」。 e-Residencyの情報は通常英語で発信されるため、非英語圏に対するアプローチが不足し、それに伴い活用事例も不足しているそう。
今後はパートナー企業と連携しながら、非英語圏もカバーする形でドキュメンタリーやオンライン講座などのコンテンツを拡充し、エストニアのことをより深く理解してもらう施策を取るという。
最後に紹介した課題は「銀行口座開設におけるハードルの高さ」である。これまで、同国の法規制では、ビジネス銀行口座としてエストニア国内の銀行、もしくはTransferWiseなどの国際送金サービスのみを認めており、実際にエストニアの銀行口座を開設する場合は、同国に直接訪問し、対面での審査を通過する必要があった。
そこで、2019年から法規制を緩和し、EU圏内の銀行、そしてフィンテックサービスの利用も認可。法人登記ができても、銀行口座を開設できない、というこれまでの矛盾状態を是正する施策を採用した。
このように、e-Residencyチームはスタートアップのように課題と対応策のサイクルを短期間で回し、世界的なe-Residencyコミュニティの形成に取り組んでいる。
日本人向けの新サービスも登場
イベント後半では、e-Residencyを通した法人登記・事業運営支援サービスを手がけるSetGoの齋藤アレックス剛太氏が、自身がe-Residencyを取得し、そこからサービスを立ち上げるまでに至ったストーリーを発表した。
2018年春にエストニアのe-Residencyに興味を持ち、実際に足を運ぶことを決意。着いた初日にエストニアの魅力に取り憑かれ、移住を即決した。その後、現地のスタートアップVeriffで勤務し、SetGoを創業。エストニア在住の立場から「非英語圏のe-Residencyコミュニティを活性化させたい」と、情報の非対称性を解消するためのサービス構想を語るなど、e-Residencyコミュニティがますます盛り上がる予兆が伺えた。
さらなる電子国民拡大を目指すe-Residencyプログラム。これから存在感が増す中で、同チームがどのような舵取りをしていくかにも注目が集まる。