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2月最後の日曜日、六本木ヒルズの52階にある展望台に入ると、一台のクルマが展示されていた。案内板には「LC500h “Structural Blue(ストラクチュラルブルー)”」とある。南米に生息するモルフォ蝶の羽の原理を応用した特殊な塗料がボディカラーとして採用されており、青色の塗料を使用してないにもかかわらず人間の目には青色に見えるという。奥行きのある不思議な色彩だ。

この場所は
「Media Ambition Tokyo(MAT)」。今年で7回目の開催となるテクノロジーカルチャーの祭典である。ライゾマティクス代表の齋藤精一、Lexus International レクサスデザイン部部長の須賀厚一、デジタルハリウッド大学の学長を務める杉山知之、そしてこのMATの代表理事であるJTQ代表の谷川じゅんじという、各界の著名クリエーターたちが一同に介し「人とテクノロジーの関係」というテーマで語り合うトークイベントが開催された。


まずは各人が自己紹介などを語った後、今回のモデレーターでもある谷川が、テクノロジーについて提起した。

谷川「テクノロジーの語源というのは、『テクネ』、つまり技巧や技術と、『ロジア』という、学ぶとか論ずるという意味の組み合わせです。技術を言語化する、生み出したものが可視化されるわけですが、私はその手前にあるのは、人の想像力とかイマジネーション、つまり思念なんじゃないかと思っています」

齋藤「僕は、テクノロジーは道具だと思っています。だから、よく言われているような技術が人の領域を凌駕するようなことは起きないと思うんです。テクノロジーっていうと、なんだか魔法みたいに思われるじゃないですか。けれど僕たちは魔法使いじゃない。道具を組み合わせて新しい表現や体験を生み出しているのだと思っています」

谷川「けど、テクノロジーって無味無臭なもので、気がつかないうちに生活に入ってくる空気みたいなものですよね。だから日々の暮らしにおける気づきとか、生活が進化していくきっかけが、テクノロジーの本質じゃないかと。そのうち、テクノロジー自体を意識しなくてもよくなるように概念が変わっていくんじゃないでしょうか」

杉山「現代はダイバーシティ、つまり多様性の時代です。全部機械にお任せしてやってもらうという考えがある一方で、機械との一体感を考える人もいる。先ほどレクサス(LC500h “Structural Blue”)を見せていただいて思ったのは、自分がクルマ自体になる技術とかエンジニアリングも残して欲しいということ。テクノロジーの進化がそれを支えていくのが、次の時代のフォーマットなのかもしれないと思います」

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左から、JTQ代表谷川じゅんじ、ライゾマティクス齋藤精一、Lexus International レクサスデザイン部部長須賀厚一、デジタルハリウッド大学学長杉山知之。なかなかの顔ぶれが交わす活発な議論に、時間はあっという間に過ぎていく。

須賀「たしかにテクノロジーはいつの間にか人間の生活の中に入り込んでいて、当たり前のように溢れています。ただそういった進化の一方で、人間には過去を懐かしむところもあります。すべてが自動になり人間は動かなくてもいいというのではなく、結局、人間には根源的に“移動する”という欲求があります。ですから私たち(レクサス)は、移動することの価値を重要視し、移動のプロセスを楽しみながらも、疲れた時はクルマがサポートするという、クルマの楽しみを見据えながら自動運転を考えていきたいと思っています」

つまり、テクノロジーが進化し続ける一方で、それとは正反対の別の価値観についても現れ始めているのだという。齋藤はこう続ける。

齋藤「最新のテクノロジーについて、知らしめるべきかというとそうではなくて、『意味はわからないけどすばらしい』というものがあってもいいと思います。というのも、現代は、オプティマイズ、つまり最適化の時代で、あらゆる情報が出そろった感がありますが、若い子はそれほどテクノロジーには興味がない。僕らが押し上げてきたテクノロジーでできることではなく、彼らの興味は過去のものに戻りはじめている感じさえします」

谷川「プロジェクターにしても、テレビのブラウン管にしても、カメラにしてもそう。それにクルマもそうですね。そこにはヴィンテージやアート性、希少性があって、コレクションアイテムとしての価値があって、もはや嗜好品の領域にある。ところで、その領域に行けるプロダクトと、行けないプロダクトの違いってどこにあるんでしょうね?」

須賀「社長の豊田章男がよく言うのは、クルマは『愛車』と呼ばれるように、愛がつく唯一のプロダクトだと。機能とか性能があるレベルまで行った時に、何が求められるかといったらキャラクターですよね。クルマっていうのは、その空間の中に自分が入って、ドライバーの意のままに操れるという、他のプロダクトとは違う要素を持っています。そういう価値も求められる一方で、どれだけ公共性が高まっていくのか私達にとっても葛藤があります。ただ、それらがクルマの1番の魅力だと思っていますが」

自らクルマ好きを公言する齋藤はこう言う。

齋藤「クルマってたまに壊れますけど、それがないと愛情が移入されないんじゃないかと思います(笑)。嗜好品ならではの“完璧じゃない美しさ”ですね。そのためにも、アートなんかでどんどん作品を出して、いい塩梅を探せばいい。完璧さは、すでに一度天井を打った感があり、テクノロジーとかインダストリアルにも、次にそういうフェーズが訪れるんじゃないかと思っています」

レクサスも、かつての完璧を求める方向から時代に合わせて考え方が変わったという。

須賀「現在のブランドテーマは “EXPERIENCE AMAZING(エクスペリエンス・アメージング)” です。日本のお客様からの品質に対する要求は相変わらず高いです。ただ同時に、破天荒な要素も人を魅了しますよね。クルマは壊れてはいけないものですが、そこを目指していきたいと思っています」

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谷川「では、エモーショナルを追い求めるのが人だとした時、テクノロジーによってエモーション自体は変わっていきますか?」

須賀「趣味の領域であるクルマと、パブリック的な要素を持つ、人の生活を便利にするクルマ。ボリュームとしては後者の方が大きいとは思いますが、我々は、人との関わり合いを大切にして、まずHuman-centeredという人中心の考え方でやっています」

須賀は、レクサスの考え方についてさらに深く掘り下げる。

須賀「結局、人間ってあまりにも機械に支配されるのは苦痛で、逃避したくなると思うんです。だから、機械が前に出るより、心地よさなど人の感性というものを大事にしたい。かつてレクサスがラグジュアリーブランド市場に投入されるにあたり、当時のチーフエンジニアは、『一般的に機械と人間との関係は “私とそれ" である。だがレクサスは、"私とあなた" だ』と言ったんです。これは脈々とある日本の文化的な考え方、製品には神が宿るということで、クルマはパートナーであるという定義をしたんですね。つまり、人間が主体であること、Human-centered。我々はそういった価値を大事にしていきたいと思っています」


2010年よりレクサスデザイン部に異動して以来、多くのプロジェクトに参加している須賀は、クルマと人とテクノロジーの関係を熱く語る

齋藤「クルマは特に“自分のもの感”とか“呼応している感”がすごく出ますが、人にスマホを渡して20分も経つと、いろいろカスタマイズされて、その人のモノになるんですよね。つまり、そもそも人と機械のどちらのヒエラルキーが上とかではなく、機械は相棒なんだということ。ディスとミーではなくて、ユーとミー。そういう方向でテクノロジーはいろんなものに入っていくんですよ」

テクノロジーはセンスと密接に関係があると語るのは谷川だ。

谷川「ハイテクの語源は、『ハイセンステクノロジー』なんですよね。『センス』というのは『間』のことで、日本って間が大事じゃないですか。ニュアンスとか塩梅とかも間ですし、この先、「テクノロジーと間」は密接に関わってくるのかと思います。皆さんはセンスに関してどうお考えですか?」

杉山「センスって、どこかから入れとかないとうまれないもの。つまり何もしない人にセンスはうまれなくて、しっかりインプットしとかないといけない。そのためには好きなことに没頭しなければならないと私は思います」

須賀「日本には工芸ってあるじゃないですか。職人が作った道具は非常に洗練されていて、私はそこにセンスを感じますね。もともと日本人の感覚はハイセンスセンステクノロジーがあるんじゃないかと思っていて、かつてS・ジョブスはソニーの製品を敬愛しました。きっとそこには、工業製品でありながらもセンスがあったからなのかなと。そういった日本人ならではの感覚を大事にしていきたいですね」

齋藤「我々が作るものは、全体的に、または包括的にハイセンスじゃなきゃいけないと思います。見た目はもちろん、持った時や触った時の感覚とか、全体のバランスをデザインされた状態で作らなきゃいけない。人間は平均を取ろうとするのか、物理レイヤーのほうに戻りつつあります。つまり時代は、フィジカリティ的なものになりつつある。土をいじるとか、何かを直すとか、人と触れ合うとか、有機的なものがもう一回復権するのではないかと思っています。我々がインスタレーションを担当するミラノデザインウィークでのLEXUS DESIGN EVENTでも、人間中心の思想で表現しています。人間としてどれだけ満足できるか、人間として人間であれるかという部分にこそ最適解があるんです」

今回のトークセッションにおいて4人の言葉から感じられたのは、各人が抱くテクノロジーへの未だ冷めやまぬ関心と情熱、そしてテクノロジーの可能性だった。テクノロジーと人との関係性がどう変貌していくか、これからも4人はそれぞれの場所から眺め続けるだろう。

そして、最後の齋藤の言葉に代表されるように、現在のテクノロジーと人との最適な関係性は、つまるところ、レクサスの“Human-centered”という考え方にも帰結している。レクサスは誕生から30年が経った現在、世界有数のラグジュアリーブランドとなった。ここまで素晴らしい成功を収めた要因は、極上のくつろぎやもてなしなど快適性の面だけではなく、乗る人に感動を提供することも重要視し、世界最高レベルのテクノロジーを信条としてきたこと。そしてなにより、人間中心という考え方をしっかりブランドに根付かせてきたことにあるのだ。



「LEXUS DESIGN EVENT 2019 – LEADING WITH LIGHT」

LEXUSは、2019年4月8日(月)~14日(日)、イタリア・ミラノで開催される世界最大のデザインイベント、ミラノデザインウィーク2019に出展し、世界中のクリエーションが集結するトルトーナ地区(Tortona)の中心であるスーパースタジオ・ピュー内アートポイント(Superstudio Più)において、LEXUS DESIGN EVENT 2019 – LEADING WITH LIGHT」を開催。

テクノロジーは人のためにデザインしてこそ価値が生まれるというLEXUSの思想“Human-Centered”(人間中心)デザインを光のメディアアートで表現し、テクノロジーでよりよい未来へと来場者を誘うインスタレーションを展示。そのコラボレーションデザイナーとして参加するアーティスト集団は「Rhizomatiks(ライゾマティクス)」だ。

また、会場では全世界の次世代を担うクリエーターを対象とした国際デザインコンペティションであるLEXUS DESIGN AWARD 2019のファイナリスト6名によるプロトタイプ作品の展示も行われる。

◎LEXUS DESIGN EVENT特設サイト
https://lexus.jp/brand/lexus-design/design_events/

◎LEXUS DESIGN AWARD ウェブサイト
https://lexus.jp/brand/lexus-design/design_award/

Promoted by LEXUS text by Nobuya Ando photographs by Setsuko Nishikawa(top photo from official)

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