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2019.02.27

東京オリンピックまであと1年 いまこそ見直すべきスポーツの「文化的価値」 

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近代オリンピックをアテネで1896年に復活させたピエール・ド・クーベルタン男爵は、自身が提唱した“Olympism(オリンピズム)”でこう説いている。

「スポーツと芸術と教育がひとつになった活動を通して、心と体のバランスがとれた生き方を目指す。4年に1度の大会は、選手たちが共にベストをつくし、同じように努力を積み重ねてきたことを認め合う場所である。そして、お互いに違いや共通点があると知ることによって、にくみ合うことのない平和な世界をつくることだ」

ここには、メダルの数やビジネスによる収益性は存在しておらず、スポーツのインテグリティが記述されている。根底にあるこの社会哲学に則れば、昨今のスポーツにみられるハラスメントなどあってはならないのである。

スポーツ界のハラスメントは、指導者がアスリートたちにとって極めて大切な「試合の勝ち負け」と「試合への出場機会」を人質にとったパワーを無意識に行使することから起こる。人は指導者によって育つのではなく、スポーツそのものによって育まれることを完全に忘れているのだ。

様々な問題はスポーツそのものに原因はなく、何事もその人自身のインテグリティの問題であるということは、外から見ている私達も忘れてはいけない。

とはいえ、スポーツをビジネスとして人生をかけて勝負をする人も多いし、そこには人同士のウェットな関係性や巨額の金銭も関わってくる。ここで私が述べていることは綺麗ごとのように見えるかもしれない。それでも私は、スポーツのインテグリティを後世に引き継ぐべく発信していきたい。

日本が2020年を景気に後世へ残すべきレガシーとは、スポーツやオリンピックのインテグリティを世界に今一度示し、世界に平和を訴えること。古くから伝わる「文明」という視点からオリンピックを観るのではなく、わたしたちの人生の質を高めるための「文化」であるという意識変革が起きれば、オリンピック後の日本も今と全く違う景色が創造できるはずだ。

文=辻秀一

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