ジャック・マー(アリババ創業者兼会長)
人材が集まる組織こそが誇りだ。
ジャック・マーはビジネスパーソンとしてのトレーニングを受けた経験はない。そのマーが率いるアリババグループが、なぜこれほどまでの業績を成し遂げられたのか。マー自身も、長らく自問してきた問いだという。「答えはたったひとつ、私のバックグラウンドが教師だったことにある」とマーは言う。
マーケティングのスキルも、テクノロジーの知識も、受け継いだ莫大な資産もなかった。ただ、「教師として習得した、人に教えて育てる“技術”が役に立った」。
マーは大学卒業後、1988年に故郷の杭州で英語教師となった。アリババグループは、マーとその教え子ら18人が共同で99年に創業。中小企業向けの取引サイトで頭角を現し、ソフトバンクなどから100億円以上の巨額出資を受けて、消費者向けEC「タオバオ」や「アリペイ」を設立。
マーは「私が最も誇りにしているのは、ビジネスモデルではなく、優秀な人材が集まる組織をつくったことだ」と胸を張る。「第5世代まで、リーダーの候補者の準備がある」「人材の層が厚いことがグループの強さだ」。
メアリー・バッラ(ゼネラル・モーターズCEO)
「古いGM」から「新しいGM」へ。
2014年1月、自動車業界初の女性CEOとなったGMの叩き上げ、メアリー・バーラ。だが、タイミングは最悪だった。前代未聞の大量リコールに隠蔽疑惑。すべての責任を彼女が背負うことになった。
バーラは自動車メーカーの城下町・ウォーターフォード・タウンシップで育ち、父親はGMの金型工。自動車業界に入るのは自
然だった。高校卒業後、GM傘下の職業学校に入学。工場勤務を経て、1990年にはGMの奨学生としてスタンフォード大でMBAを取得した。
他人を気遣うことができるだけでなく、危機に際しても機転を利かすことのできる冷静なエンジニア。そんな二面性により、彼女の評判はGM内で職位が上がるにつれ高まっていった。
CEOになるや苦境に立たされたバーラだが、迅速な被害者対応などにより経営への深刻な影響は回避された。この危機は、業績の伸長を妨げてきた“古いGM”の殻を破るチャンスになった。「もちろん、今回の事態に真っ正面から向き合います。と同時にこれは、社を変えるチャンスでもあるのです」。