ビジネス

2019.02.27

「できるできない」ではない、「やるかやらないか」が会社を変える

ジャパンディスプレイCMO/X-TANKコンサルティングCEO・伊藤嘉明


虎ノ門にあるVenture Cafeでのイベントにも参加してきた。自社とか業界といった枠組みにこだわらず、オープンイノベーションを推進していくことで、これまでとは全く違う発想のビジネスが生まれてくる。

海外展開という意味では、10月に香港で開催された中国の新興企業が数多く参加する展示会「スタートアップ・ローンチパッド」にも初参加した。会場では、スマートヘルメット「XHD-01 スパルタ」をはじめ、従来のディスプレイメーカーとしてのJDIとは一線を画す展示を行い、大きな注目を集めた。

これらはすべて、最初の戦略発表会で高らかに目標を掲げた成果だといってもよい。いわば「有言実行」から生まれた「果実」なのだ。

パネル売り切り事業からの転換

12月の第2回の戦略発表会のテーマは、「オープンイノベーションの推進」「海外展開の開始」「戦略的アライアンスの締結」の3つだった。その際には、英国 Arm社の日本法人、トレジャーデータとの戦略的協業も発表した。

この提携には大きな意味がある。ディスプレイは情報を映し出すものだ。つまりアウトプットデバイスということになる。しかしこれからは、ディスプレイを「インプットデバイス」としても捉えていく。そこでは、取得したデータをどう活用するかという視点が必要だ。だからこそ、データ活用のプロフェッショナルであるトレジャーデータとの提携が必要だったのだ。



JDIの事業を「モノづくり」から「コトづくり」へ昇華させるために、そして、パネル売り切りの部品事業からソリューション事業へのビジネスモデルの転換を図るために、絶対に必要なアライアンスであるとかねてから考えていた。

「モノづくり」から「コトづくり」へとはどんなことか。例えばインプットデバイスであるJDIの指紋センサーをドアに貼り付けたとしよう。ドアを開けようとした人の指紋をセンサーが感知して、本人確認ができたらドアが開く。JDIの技術でこのようなドアは実現できる。ディスプレイを単なる情報を映し出す「モノ」だと思い込んでいれば、なかなかこの発想には至らない。

また、JDIのセンサーは自在に曲げることができる。センサーをフィルム状にして、自動車のハンドルに貼り付けることもできる。すると、例えば、バスの運転手のバイタルデータをモニタリングして、心臓発作が起きる前に心拍などの乱れを検知した時点で、アラートを発することもできるようになる。自動運転技術と組み合わせれば、自動運転に切り替えて安全に停車することもできるに違いない。これこそが「コトづくり」だと言える。

こういったアイデアを考える際に最も大切なことは、「デバイスを売る」のではなくソリューション、プラットフォームを売るビジネスに展開していくことを念頭に置いておくということだ。いま発表している数々のコンセプト商品もアイデアソンも提携もそのためのものだと言える。

そして、「モノづくり」から「コトづくり」を宣言して、それらを有言実行することで、JDIは常に大きな変革に取り組む企業として成長していくのだ。

文=伊藤嘉明

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