アカデミー賞作品賞「グリーンブック」が直面した遺族からの抗議

左からマハーシャラ・アリ、ピーター・ファレリー監督、ヴィゴ・モーテンセン(Photo by John Lamparski/WireImage)

第91回アカデミー賞の授賞式が2月24日、米ハリウッドのドルビー・シアターで開催された。事前予想で大混戦となっていた作品賞は、ユニバーサル配給の「グリーンブック」が、ネットフリックス配給の「ROMA ローマ」を抑えて受賞した。

「グリーンブック」は、ピーター・ファレリー監督が、マハーシャラ・アリとヴィゴ・モーテンセンを主役に起用した作品。ほか作品賞には、スーパーヒーロー映画の「ブラックパンサー」や、スパイク・リー監督の「ブラック・クランズマン」、クイーンの伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」などがノミネートされていた。


Photo by Kevin Winter/Getty Images

「グリーンブック」がテーマとしたのは、天才黒人ジャズピアニストのドン・シャーリーと、彼が雇った粗野で無教養なイタリア系移民の白人ドライバーのトニー・リップの交流だ。二人は人種差別が残る米国の南部を演奏ツアーで回る。

タイトルのグリーンブックは、1966年まで毎年出版されていた、黒人が宿泊可能なホテルなどを記載した旅行ガイドブックを意味する。

一部の映画批評家は、モーテンセンが演じたトニー・リップの役柄が、黒人を差別から救う救済者として誇張され過ぎていると批判した。また、シャーリーの遺族からは、この映画が伝説のピアニストと、家族の関係を誤って解釈しているとの抗議も受けていた。さらに、映画が完成に近づくまで、制作陣から連絡がなかったことについても不快感を表明していた。

本作の脚本は、トニー・リップの実の息子のニック・バレロンガらが執筆した。バレロンガにコメントを求めところ「ドン・シャーリーの遺族らの主張に関して、自分はコメントする立場にない」と述べた。

映画サイトの事前投票では、同カテゴリ作品の「ROMA ローマ」の評価が「グリーンブック」を上回っていた。「グリーンブック」の制作費は2300万ドル(約25億円)で、これまで世界で1億4400万ドルの興行収入を得ている。

「ブラックパンサー」の興収は14億ドル。「ボヘミアン・ラプソディ」の興収は8億8060万ドルを記録している。

編集=上田裕資

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