政府予算の「半分が高齢者向け」は善か悪か 議論が無意味な理由

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米国は10年後、連邦政府の予算のおよそ半分(債務の利払い費は含まない)を65歳以上の国民のために使うことになる。避けようのないベビーブーム世代の高齢化は、高齢者の生活を支えるため(主に医療費と年金の給付のため)の連邦政府の支出が増え続けることを意味する。

だが、米議会予算局(CBO)が重要な問題として指摘しているとおり、こうした傾向を単純に、「税金が若年層より高齢層ばかりに使われるようになること」だとするのは、語弊がある言い方だ。
連邦政府の給付がなければ、年老いた両親の世話をする子供たちの負担は、さらに重くなる。米国は1930年代に社会保障制度、1960年代に公的医療保険制度を創設したことによって、高齢化に伴って必要となる費用の一部を社会全体で負担することに決めたのだ。

ただ、米国の財政政策にこの決定が持つ意味は、ベビーブーム世代の高齢化によってより重大なものになってきている。

社会保障制度とメディケア

議会予算局が1月に発表した最新の報告書によれば、連邦政府は2005年には、予算の約3分の1を高齢者向けの給付に充てていた。これらが予算全体に占める割合は増加を続け、昨年には40%(約1兆5000億ドル、約166兆1300億円)となった。2029年には、全体の2分の1に当たるおよそ3兆ドルに達する見通しだ。

別の言い方をすれば、連邦政府は国内総生産(GDP)の約10%を高齢者のために使うことになる。この割合は、2005年には約6%だった。

CBOの推計によれば、2029年には2つの制度、社会保障とメディケア(高齢者・障害者向け公的医療保険制度)に2兆7000億ドルが費やされることになる見込みだ。これらに充てられる金額が増える主な理由は、高齢者が 2010~30年の間におよそ3000万人増加することだ。実際には、現在CBOが見込んでいる以上の額が必要になるかもしれない。

「仕方のない」こと

評論家らは、高齢者向けの支出の大幅な増加が良いのか悪いのかを議論したがるだろう。だが、どちらであるにしても、それを明らかにしようとすることは無意味であるように思える。

これはどちらかといえば、仕方のない問題だ。社会の高齢化と医療費負担の増加(高齢者以外も含めて)がもたらす、避けようのない現実だ。社会は増加する高齢者人口を支える必要がある。問題は、それをどのように実現するかという点にある。

そのための方法として考えられるのは、以下の4つだ。

・最も助けを必要とする人は、高齢者以外にも大勢いる。それを理由として、高齢者向けの支出を削減することもできる。ただ、そうすれば私たちは、介護や世話を必要とする人とその家族により大きな負担を背負わせることになる

・政府は必要な資金を賄うための借り入れを行い、それによって支出を増やし続けることができる。ただし、この選択肢は債務にかかる利息を増やし、経済の成長力を限定的なものにする

・政府はこれまで消極的だった方法だが、増税によって歳入を増やすことで対応することができる

・上記3つを組み合わせた方法で対応することも可能だ

高齢化する社会を支えるにはお金がかかる、それも巨額の資金が必要だという現実を、私たちは受け入れなくてはならない。私たちはそれぞれの家庭で、あるいは共同で、この負担を背負うことができる。できないのは、この問題を無視することだ。

編集=木内涼子

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