ニースのカーニヴァルの特徴は、シャ(山車)にその年を象徴する人物の風刺画を飾ること。時には自国の大統領を飾ることもあり、表現の自由を謳うフランスらしいといえばそうなのですが、物議を醸すこともしばしば。コミュニケーションが大好きなフランス人は、こうしたお祭りも建設的な会話のきかっけにしていると感心します。
ピエロのようなトランプ大統領がマクロン大統領を握っているシャ(Getty Images)
イースターに備えて、肉よさらば
さて、そもそもカーニヴァルとは何かご存知でしょうか? ブラジルのサンバパレードなど、エンターテイメント的なお祭り騒ぎを連想する人が多いと思いますが、本来はキリスト教の「謝肉祭」のことです。
語源は、俗ラテン語の「carnem(肉)」と「levare(取り除く)」。どういうことかと言うと、キリスト教において最も重要な祭である「イースター(復活祭)」と、その前に訪れる節制の期間「カレーム(四旬節)」の前に、欲望のままに脂肪分の多い物を食べ、お酒を飲み、歌って踊って賑やかに騒ごうということ。
要するに、「ありがとう、肉よさらば」祭りなのです。
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ではなぜ、そんな祭りがあるのか?
いまのような冷凍・冷蔵庫などなかった時代、人々は食材を塩漬け、発酵、乾燥させて保存食を蓄え、それらを食べながら冬を乗り越えていました。しかし、塩はドーパミンを放出させ、また肉(動物性タンパク質)は興奮剤になるとも言われるように、塩漬けした肉を食べ続けると、快楽により変な行動を起こしたり、事故が起きたり……。そこで、その食習慣により脳が快楽を感じているのを利用してカーニヴァル(謝肉祭)をするというわけです。
そして、マルディグラ(肥沃な火曜日)と言われるカーニヴァル最終日に、脂を断ち、質素で素朴なガレットを食べ、カレームを迎えます。カレームは、イースター前の40日間。カーニヴァルで肉に別れを告げて迎えるこの期間は、肉類を断食します。
面白いのは、この時期が、走り(プリムール)と言われる春野菜が出始める頃だということ。菜の花、ブロッコリー、アスパラガス、アーティーチョークなど、少し苦味のあるこれらの野菜は、うま味成分のグルタミン酸やリラックス効果のあるGABAを多く含んでいて、塩漬け肉で疲れた身体を整えるのに最適なので。
そしてカレームを過ぎると、イースターを迎え、また新しい生命をいただきます。