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2019.02.24

年間売上400億円 ラトビア発スタートアップが日本の森林に注目する理由

Shutterstock /Alex Tihonovs

日本の国土面積に占める森林率は、世界第2位。しかし、少子高齢化や林業に関わる地方人口の減少に伴い、林業は衰退の一途を辿ってきた。林業全体で、20年に1度、木材のストックをはかってはいるものの、随時増える木の本数や種類も正確には把握できていないという。

そんな日本の林業を大きく変えるかもしれない、あるシステムを日本に導入しようとしているのが「ラトビア国営森林公社」と「PINS JAPAN」だ。


バルト三国のひとつであるラトビア国。6万4000平方キロメートルと北海道より一回りほど小さい国が今、林業の領域で世界の注目を集めている。針葉樹を原料とした材木シェアは世界第9位、木質ペレットの輸出は世界第3位、木材を使ったプレハブ住居の輸出高は世界第1位のシェアを占める。

この数の大半を担うのは、ロベルツ・ストリープニェクスが代表を務める、1999年に設立されたラトビア国営森林公社だ。ラトビアの約25%に該当する160万ヘクタール、ちょうど四国ほどの土地を管理する、森林と不動産管理におけるリーディングカンパニーだ。

インハウスで開発した「LVM GEO」という地理空間情報システムは、AIを用いて森林の在庫と状態を管理。「ジャスト・イン・タイム」方式で、森林業界では異例の在庫の廃止を可能にした。

インハウスで改善を重ね、林業の収益向上へ

ラトビアは、少子高齢化の問題に国の存続問題として直面している。林業はラトビアのGDPや雇用、土地資源の有効活用の点から重要な産業である一方、携わる人口は、地方を中心に劇的に減少していた。

そんな中、ラトビア国営森林公社は林業の効率化による収益化を模索していた。

「もとは協業できるITディベロッパーを探していたのですが、彼らと話をして気づいたのは、自分たちが今まで積み重ねてきた林業に関する知識やノウハウを共有しても、本質的な課題解決につながらないということ。彼らが開発しようとするシステムは、他社にも売れること想定していて、実用化はあまりにも遠い道のりに思えたのです。だからIT専門の方に任せるのではなく、インハウスで開発を進めることに決めました」

ロベルツはまず、社内でのペーパーワークを廃止。全てのデータを中央コンピュータに集約した。さらに、政府や他の民間企業が持っている最新データを、森林の作業現場にいる一人一人が瞬時に共有できるようにした。

何か問題があれば、関係者全員のコンピューター及びタブレットにボタン1つで情報が共有される。それまで当たり前だった、紙の地図に基づいて指示を出す森林の作業現場の風景は、「LVM GEO」により昔話となった。
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文=水玉 綾 写真=今井裕治

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