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春は名のみの季節だが、ゴルフ場のフェアウェイには早春の気配が息づいている。薄茶の芝からターフを取ると、緑色の芝芽が現れる。四半世紀前の今頃だった。スコアが100を切り始め、いちばんゴルフが楽しい時期である。もっと上手くなりたいのが人情。アドバイスをもらおうと、プロ級の友人と一緒に回った。

ドライバーは、我ながらナイスショットだった。だが、友人は「スタンスが広過ぎるし、バックスイングで左膝が硬い。あとテイクバック。もっと右肘を締めて」。これはしかし、ほんの序曲だった。アイアンではグリップからボディーターン、踵とつま先の位置まで、要は全部ダメ出し。スコアどころの話ではない。

元のスイングに戻そうとしても、もうバラバラ。楽しいはずのゴルフは悲惨な修行の場と化した。

新会社などの運営に関わると、いつもこの苦い経験を思い出す。新スタートから何年間かは、思い通りにならないことばかりである。試行錯誤と失敗の連続の中で、ようやく一息つける日々がやって来ると、今度はもっと危険な罠が待ち受けている。

評論家や学者の言説、それに気鋭といわれる経営コンサルタントらの助言である。彼ら、「先生族」の主張は斬新でロジカルだし、イノベイティブな響きを持っているから、多くの経営者がそれに惹かれる。

だが、不用心に鵜呑みにするのは禁物だ。参考にする程度なら大いに役立つが、うっかり現在のビジネスモデルの屋台骨を入れ替えるような真似はしない方が良い。自社を一番知るのはラインのリーダーである。そうでなければ事業は破綻する。破綻すれば経営者は路頭に迷う。先生族の諸氏はそれをネタにさらに稼ぐ。

最近何かと批判される官民ファンドも同じだ。メディア上では、損ばかりしている、経営やガバナンスが不透明ではないか、から始まって、そもそも官民ファンドなど不要だ、まで辛口オンパレードといって良い。これらの厳しい指摘は、虚心坦懐に受け止めるべきだが、的外れだなあ、と感じる論旨も少なくはない。

今一度、官民ファンドとは何か、を振り返っておくべきだろう。

官民ファンドは、「損しちゃダメだが儲けてもいけない」という大矛盾、ハイリスク・ローリターンという投資の世界の「異常識」を、時間軸を延ばすことで解決しつつ、一定の政策目的を達成しようという志で設立された。その原資は国費である。

したがって、損失は国民の懐を痛めるからご法度。これはわかりやすい。ではなぜ儲けてはいけないのか。儲けるようなファンドは民間の世界のものだからだ。官民ファンドによる民業圧迫は禁じ手である。

じゃあ、悠長に時間をかけて、損もしないが儲かりもしないなどという、訳のわからない投資分野など存在するのか。それはある。

中長期的には大成するだろうし、将来の経済成長のドライバーになりうる分野、つまり政策意義が高い分野であっても、短期収益指向の民間では手が出しにくい性格の投資である。

文=川村雄介

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