ビジネス

2019.02.22

「デザイン思考」について思うこと ペンタグラム唯一の日本人・スズキユウリ

スズキユウリ氏(写真提供=Pentagram)


日本のデザイン技術は世界ナンバーワン

──スズキさんはペンタグラムでは何をされているのでしょうか?

これまでやってきた、音を軸とした経験のデザインですね。クライアントの企業理念をインスタレーションで体現しています。規模の大きいプロジェクトもいくつか動いています。

──ペンタグラムにジョインされる前は、ご自身でもデザインスタジオを経営されていたんですよね。

そうですね。クライアントから依頼されるプロジェクトをチームで担当していました。主なメンバーは僕、リードデザイナー、マネージャー、テクノロジストの4人。スタジオを経営する経験はペンタグラムでも大いに活かされていると思います。

例えば「OTOTO(オトト)」という、果物や折り紙、鍋など触れたものはなんでも楽器に変えてしまうDIYシンセサイザーを作ったときのこと。OTOTOの販売数は約8000〜1万で、もっと安価に抑えて広く提供しようとしたところ、商品の単価を下げるには1万程度の小ロットでは足りなかった。そんな些細なことも、そのとき実際に経験して初めて知りました(笑)。

自分でスタジオを経営する以上、デザインのスキルだけでなくビジネスも学ばなければいけません。OTOTOをはじめとして自分の会社で手がけてきた様々なプロジェクトを通じて学んできた経験は、世の中の仕組みを知る上でとても大切でした。


2013年にKickstarterを通じて開発、販売された「OTOTO」。2014年にはMoMAのプライベートコレクションに選出された。

ビジネスを理解するデザイナーの存在は、世界的に見ても貴重なのだと思います。ペンタグラムに最近ジョインした4人のパートナーは全員、自身でスタジオを切り盛りしてきた人たちでした。彼らもすごく優秀な人です。

──ペンタグラムにジョインされたことで、世界各国のデザイナーと関わる機会が増えたかと思います。スズキさんから、日本のデザイン業界はどう見えますか?

私はもう14年間日本を離れているので、リアルタイムに国内事情を把握しきれていないですが、それでも海外と比べて日本のデザイン業界は全く遅れをとっていないと感じます。

日本のクリエイティブの強みは、技術力。世界を見ても、物をつくりあげるクオリティはダントツで一番です。ロンドンやペンタグラムで世界のデザイナーと出会いましたが、デザインのディティール、クオリティ、プロダクトの機能性は全てにおいて日本が世界一だと思っています。
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構成=田中一成

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