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Tomohiro Ohsumi / by Getty images

ソフトバンクの孫正義会長は2016年、1000億ドル(約11兆円)規模のビジョン・ファンドを設立した。ビジョン・ファンドは新興のテック企業らに、1億ドル以上の資金を注いでいる。

しかし、先日の報道で同ファンドの二大出資者である、サウジアラビアとアブダビの政府系ファンドが、ビジョン・ファンドの運用を担うソフトバンクへの不満を募らせていることが明るみに出た。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に掲載された記事によると、出資者らは、投資先の評価額の高さや、投資判断に対する孫正義社長の影響力の大きさを懸念しているという。これが事実であれば、ビジョン・ファンドは今後の投資姿勢に変更を迫られることになる。

孫社長はビジョン・ファンドの設立にあたり、2〜3年ごとに新たなファンドを設立し、毎年500億ドルをスタートアップ企業に投資すると述べていた。調査会社プレキンによると、2018年の世界のベンチャーファンドの調達額の合計は790億ドルで、投資額の総額は2750億ドルだった。

ベンチャーキャピタル業界の現在のトレンドは、業界を絞り込んだ投資や、ディープテック領域に特化した投資となっている。これに対し、ビジョン・ファンドは広範囲な領域の著名な企業らに投資し、巨大な成長機会を狙っている。

ビジョン・ファンドの巨大な出資ボリュームを支えているのは、サウジのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)とアブダビのムバダラ・インベストメントだ。この2社は、ビジョン・ファンドの資本の約3分の2を拠出している。

1回あたり、1億ドルもの巨額な資金を適切なスタートアップ企業に投資し、成長に導くことは決して容易ではない。また、一般的なベンチャーファンドらは、このような投資スタイルをとることは不可能だ。

ここで懸念されるのが、ソフトバンクが運営するメガファンドが、他のファンドが投資先に狙う新興企業の評価額の相場を高騰させてしまうことだ。

2017年の立ち上げ以来、ビジョン・ファンドは配車サービスのウーバーや、共有オフィスのウィーワークに出資した。ウーバーの評価額は現在720億ドル、ウィーワークは470億ドルとなっている。

ビジョン・ファンドはまた、中国の配車サービスの滴滴出行(Didi Chuxing)にも出資しており、滴滴の評価額は560億ドルに及んでいる。さらに、動画アプリの「Tik Tok」を運営するバイトダンスにも出資し、同社の企業価値は750億ドルとなり、ウーバーを抜いて世界で最も企業価値の高いユニコーン企業となった。

ビジョン・ファンドは中国の顔認識に強みを持つAI企業、センスタイムにも、10億ドル規模の出資を目指しているとも伝えられる。この出資が実現すれば、現在の評価額が45億ドルのセンスタイムの企業価値はさらに上昇することになる。

今回報道されたような出資元からの不満が、ビジョン・ファンドの今後の投資にどのような影響を与えるかが、気になるところだ。

編集=上田裕資

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