ビジネス

2019.02.20

メッセアプリでLINEに敗北した起業家は、キャラビジネスで世界一を目指す——クオンが4億円調達

代表取締役 水野和寛



日本のオフィスで働くクオンのメンバー(クオン提供)

スタンプは「キャラクタービジネス」に

LINEのほか、海外のメッセンジャー事業者などにスタンプなどを提供するようになったクオン。2013年頃には事業も安定してきた。Facebookの米国本社にも直接アプローチし、Facebookメッセンジャーのスタンプにも採用が決まった。

「我々は『非言語コミュニケーションのエキスパート』として見られていました。当時の欧米では、LINEのスタンプが流行すること自体、理解できないようでした。彼ら(欧米人)にとってスタンプは『ペタッと貼るステッカー』でしかなかった。ですが日本などでは『感情表現のツール』として使われるようになっていました」

事業者へのライセンス提供(事業者が購入することで、ユーザーは無料でそのスタンプを利用できる)やユーザーへのスタンプ販売を行いつつ、ソーシャルゲームなど他の事業も展開していたクオン。2015年に中国で提供していたスタンプが人気になり、キャラクタービジネスに集中するようになる。

「WeChat上で無料提供していた『Elissy』というキャラが人気を集め、あるとき1億ダウンロードを突破しました。その頃から、グッズ展開や企業プロモーションへの利用といった問い合わせが急増したんです。これまでは『スタンプは(ユーザーに)売れないと価値がない』と思っていましたが、無料でも広まると次のビジネスにもつながることが分かりました。そこで悩んだのですが、開発よりもデザインの会社になろう、テクノロジーよりグローバルな会社になろう、と決めキャラクタービジネスに集中することにしました」


累計で25億ダウンロードを達成したクオンのスタンプ(クオン提供)

クオンが展開するスタンプは累計で25億ダウンロードを達成。2017年以降はグローバルでキャラクターのライセンスビジネスも展開している。対応言語は7言語以上で、海外売上比率は65%以上に拡大した。業績は非公開ながら「数億円中盤とイメージしてもらえればいい。2期前から黒字化も達成している」(水野氏)という。

この成長を支えるのは、同社のクリエーター、そしてデータだと水野氏は説明する。例えば「韓国ではウサギをモチーフにしたキャラクターが人気」といったように人気の傾向を分析。データもとにキャラクターのクリエイティブ方針を決めているのだという。

ネット発のキャラクターで世界一に

クオンは今回調達した資金をもとに、マーケティングや営業組織を強化。国内外でオンラインからリアルまでのキャラクタービジネスを展開できる体制を整えるとしている。また今後は、自社以外のキャラクターの海外展開も支援するとしている。


香港のショッピングモールに設置された、べタックマのブース(クオン提供)

「インターネット発、キャラクターを生み出す会社として、世界で一番になります。キャラクタービジネスは、世界に通じる、社会的価値のある事業です」

「キャラクターは、生まれる場所があって、広がる場所ができる。そこにファンが付いて、お金を払うことでビジネスになります。キャラクターが生まれる場所は時代によって変化します。あるときは店舗だったり、またあるときはテレビや映画だったりします。僕らはインターネットという場所でキャラクターを生み出して、発展させていきます」

「現在人気を集めるキャラクターのほとんどは、『インターネット以前』に生まれたもの。みんながネットに時間を使っている今だからこそ、これまでのキャラクタービジネスをひっくり返せるんじゃないでしょうか」

文・写真=岩本有平

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