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2019.02.20

メッセアプリでLINEに敗北した起業家は、キャラビジネスで世界一を目指す——クオンが4億円調達

代表取締役 水野和寛

LINEやFacebookメッセンジャーで使う「スタンプ」。そのスタンプを起点にキャラクタービジネスを展開するのがクオンだ。同社は2月20日、総額約4億円の資金調達を実施したことを発表した。今後はキャラクタービジネスの世界展開を進める。

今回の資金調達では、ニッセイ・キャピタル、ABCドリームベンチャーズ、オー・エル・エム・ベンチャーズ、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、一般社団法人CiP協議会の5社1団体からの第三者割当増資および株式譲渡を実施。あわせて三井住友銀行、みずほ銀行からの借り入れを行った。なおクオンは2017年7月に東宝との資本業務提携を発表しており、自社キャラクターを原作にした映像作品も制作している。クオンの累計資金調達額は、合計約8億円となっている。

創業者は「デコメ」ヒットの仕掛け人

クオンの設立は2011年8月。代表取締役の水野和寛氏は、2000年代初頭からモバイルビジネスに関わってきた人物として知られる。水野氏は2001年に寺島情報企画に入社。「デコメール」や「着うた」、「きせかえ」といった、ガラケー(フィーチャーフォン)時代の大ヒットサービスに関わってきた。

「学生時代はひたすらDTM(デスクトップミュージック。PCで音楽を制作すること)でダンスミュージックを作っていました。それがきっかけになって、寺島情報企画で発行していた『DTMマガジン』の編集部に入りました。社会人の最初の2年ほどは、編集者をしていました」

「ですが当時は(携帯電話の着信音を楽曲風にする)着メロ(着信メロディ)がブーム。着メロはコンピューターで作る、つまりはDTMだったんですね。ジェイフォン(ソフトバンクの前身の通信キャリア)から自社に『着メロの情報メディアを作ってくれないか』という依頼があり、その事業を私が担当することになりました」



スマホで自由にネットにアクセスできる今ではとは違い、当時のモバイルインターネットは、キャリアとパートナーシップを組んだ事業者が運営する「公式サイト」にだけアクセスできた時代。着メロは大きな利益を生むビジネスに成長していった。

「周囲の企業はものすごく儲かっている状況でした。ですがメディアをやっているため、着メロをやるのは、(メディアで付き合いのある着メロサイトと)バッティングするので参入できません。じゃあ音楽ではないところでできないかと考えたのがデコメ(デコメール)でした」

当時のガラケーメールでは、まずテキストと、キャリアごとに提供されている絵文字しか使えなかった。そんなシンプルなメールがcHTMLというモバイル向けの言語に対応したことで、メールの文字を着色したり、画像やアニメーションを取り込んだりできるようになった。水野氏がデコメ要の素材を提供するサイトを立ち上げたところ、大ヒット。月額200〜300円のサイトは、最大で100万人の会員を抱えるまでに成長した。

“LINEに敗北”でスタンプビジネスに転換

2008年にiPhoneの日本販売がスタート。水野氏はスマホ事業に集中すべく、アプリ開発に特化した子会社を立ち上げる。画面上の数字を1から16までタップするスピードを競うカジュアルゲーム「Touch the Number」などのヒットを生んだものの、当時海外で次々にローンチしていたメッセージングサービスに強い興味を持って独立。クオンを立ち上げた。

「2010年にはBeliga(のちにFacebookが買収。Facebookメッセンジャーの前身)やGroupMe(のちにSkypeが買収)、カカオトークなどが出てきた時期。これは絶対にはやる。コミュニケーションが大きく変わると思いました」

だがそんなクオンより先にメッセンジャーアプリをリリースしたのがNHN Japan(現:LINE)だった。同社は2011年6月に「LINE」を公開し、同年冬にはテレビCMを軸にした大規模なマーケティングを展開。無料通話とスタンプ機能をウリに、ユーザーを一気に拡大させた。

1年ほどメッセンジャーアプリ事業を続けた水野氏だったが、ダウンロード数は100万件で頭打ちになる。スタンプやコンテンツといった領域に事業をシフトしていくことになった。
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文・写真=岩本有平

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