米インディアナ「ツタが覆う球場」の元祖を訪れる至福の瞬間

リグリー・フィールド(getty images)


解体後の2014年4月、この球場で使われていた座席は単独席が45ドル、ペア席が80ドルで売り出された。そして、2013年、跡地に138室のスタジアム・ロフツというアパートが完成した。


ペリースタジアムとしての役目を終え、アパートとして改築されたスタジアム・ロフツ

2015年夏、僕はこの球場の跡地へ向けてシカゴから車を走らせた。アパートが建設されたと聞いていたので、球場は完全に取り壊されたものと思い込んでいたのだが、跡地に行ってみて驚いた。

確かにアパートが建設されていたものの、フィールド、煉瓦造りのフェンス、照明塔、スコアボードが残っており、球場正面の建物はアパートの一部として再利用され、野球場の姿がそのまま残っていたのだ。煉瓦造りのフェンスには、今でもツタが残っており、アパートの周辺の道路は、スタジアム・ウェイという名前がついていた。



南国リゾートよりも贅沢な時間

正面の入口には、チケット売り場用の窓がまだあり、外壁には球団のロゴマークも残っていた。また、正面入口前と、跡地が面している大通りのバス停にはスタジアムで使用されていた座席が設置されていた。

その椅子に座り、球場の面影がたっぷり残る球場跡地を眺めながらバスを待つことができるのだ。これはすごい。球場跡地をこよなく愛する者にとって、たまらない発想だ。これまで数多くの跡地を訪れたが、ここまではっきりと球場の面影が残っている跡地は珍しく、球場の素晴らしい再利用であり、有効活用だと思った。

気がついたら、僕は、無意識にその座席に腰を下ろしていた。そこがバス停であることをすっかりと忘れて、そこでサチェル・ペイジ、ジョシュ・ギブソン、ハンク・アーロンなどがプレイしていた姿を想像しながら跡地を眺めていた。この日は快晴で、心地よい風が吹き、とても幸せな時間だった。南国リゾートの高級ホテルの専用ビーチでくつろぐよりも、贅沢な気分を味わえた。



デトロイト・ニューズ紙のジョー・フォールズは、「死に場所を選ぶとしたら、6月の爽やかな午後にフェンウェイパークの記者席で死にたい」と書き残したというが、その気持ちが分かるような気がした。

このまま何時間でもここで過ごせるような気がしたので、飽きるまでそこに留まることにした。しかし、しばらくすると、突然、目の前にバスが止まり、運転手と乗客が「早く乗車しろよ」と言わんばかりに、こちらをジロジロと見るので困ってしまった。

連載:「全米球場跡地巡り」に感じるロマン
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編集=Forbes JAPAN 編集部

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