ビジネス

2019.02.21

「売れないことより、意図せず売れることが怖い」D2Cアパレルが提示する未来のブランド像

大阪の工場で丁寧に作られる、foufouの服

SNSでじわじわとファンを増やし続けているレディースブランド「foufou(フーフー)」を知っているだろうか。

「健康的な消費のために」をテーマに、シンプルで上品ながらも手頃な洋服を作り続け、インスタグラムのライブ配信を通じて販売した商品は即完売する人気ぶりだ。

ブランドを手がける28歳のデザイナー 高坂マール氏は別の会社で正社員として働くかたわら、兼業で洋服を作っている。2016年にブランドをスタートし、昨年12月には売上が月間1000万円を超えたというから驚きだ。


foufouデザイナー 高坂マール氏
 
しかし、趣味の延長で洋服を作って販売するクリエイターは星の数ほどいる。なぜ「foufou」は兼業ながらも1000万円もの売上をあげることに成功したのだろうか。2月初旬、彼がSNSで配信する動画コンテンツを撮影するために大阪にある提携先の工場を訪れるというので、同行して彼の思想を覗くことにした。
 
新・ファストファッションを目指して

高坂は大学でヨーロッパ芸術を専攻していたとき、仲間がみな就職活動に取り組む中で「自分には何ひとつやりたいことが見つからなかった」と当時を振り返る。そんな彼の人生を変えたのは「無印良品」でアルバイトをしていた時の先輩との会話だった。
 
「多摩美術大学に通いながらグラフィックデザイナーをしている先輩が『無印良品』が好きすぎて土日だけアルバイトをしていたんです。ある日、その先輩が『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』という本を教えてくれて。『君は頭が切れるから、これからの時代にモノ作りをすべきだ』と言ってくれたんです」。
 
その後、高坂はアパレル企業で生産管理などの仕事をしながら、先輩の紹介もあって、週4日、文化服装学院の夜間に3年間通った。会社で大量生産志向、学校ではアートピース志向という両極端の2つの側面に挟まれながら「僕は誰に何を届けたいのか」を考え続けた。一方で、消費者として純粋に洋服をたくさん買ってはSNSにアップしてオシャレを楽しむ自分自身にも違和感を感じていた。

そんな狭間から、“大量生産”ではない仕組みながらも自由にファッションを楽しめる価格帯の「ファストファッションに対抗するファストファッション」というコンセプトが生まれ「foufou」をスタートしたというわけだ。ブランド名は画家の藤田嗣治がフランスへ移り住んだ時のあだ名だそうで、「自分を知ってもらってからじゃないと絵なんて見てもらえない」という彼の思想に共感したことが背景にある。


foufou提供

ブランドを始めた当初は時間を見つけてハンドメイドで洋服を作り、インスタグラムで地道に販売するという手法だったため、生産数にかなりの制限があった。2018年に生産管理・物流などの業務を依頼すべく、nutteを運営するステイト・オブ・マインドと協業。提携工場を作って生産を託し、自身はクリエイションに集中するとともに、ある程度の量産が可能になった。
 
「僕はゼロからイチを作るというより、『この洋服をこうしたら可愛いのに』と考えることが好きなんです。日常で着る服だからこそ、様式や装飾、シルエットなどを分解していろんな要素を足していく、編集とかキュレーションみたいな仕事なのかもしれないです」と自身のクリエイションを語る。
 
そのため、ディテールにはこだわりながらも、信頼する工場やパタンナーへ必要以上の指示はしないという。「今の僕ができることはSNSを使って作った洋服の思想を共有し、ファンに売っていくこと。工場のことや洋服のことこそ、僕が発信していくべきだと思うんです」。


高坂氏のインスタグラムより

実際に彼は新商品の販売に合わせてライブ配信をしているだけでなく、日頃からSNSを通じてファンとのメッセージのやりとりなどを欠かさない。今回の大阪でも工場の様子を動画に撮り溜め、自身のSNSで今後発信をしていく予定という。
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文・写真=角田貴広

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