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シネマ未来鏡


出世作である「ロブスター」は、子孫を残さない独り身の人間は動物に変えられてしまうという近未来の社会を描き、その奇抜な物語と作品の持つ独特な世界観が注目された。「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」では、ギリシャ神話をベースにして、1人の少年の出現で崩壊に向かっていく家族を、音と映像を駆使してホラータッチで描いた。

今回の「女王陛下のお気に入り」では、初めての歴史物に挑戦。とはいえ、描かれている世界は現代に通じるものもあり、ランティモス監督のつくりだすショッキングな映像と、3人の女優たちの躍動する演技も相まって、かなりドラマティックな世界がつくり出されている。

これまでどちらかというと「奇想」の人という印象が強かったランティモス監督だが、それを払拭し、その演出力も並々ならぬものだということを再認識させた。

アカデミー賞で最多ノミネート

「権力を持ったひと握りの人間が、その他大勢の人生に影響を与えられる。そんな選ばれた人物の社会的地位に興味があった。実在の人物や歴史からインスピレーションを受けたが、大部分は再考した。いまの時代にもある同じような課題を認識し、共感できるような作品になったと思っている」

こう語るランティモス監督だが、「女王陛下のお気に入り」は、単なる3人の女性のせめぎ合いのドラマともとれるが、実は、どこの社会にもある連衡と離反、権謀術数が渦巻く権力争いの物語だとも言えなくもない。だからなおさら面白い。



病弱で政治に無頓着なアン女王、自らの権力を誇示しようとするサラ、そして野心のためには嘘も裏切りも辞さないアビゲイル。火花を散らす3人の女性たちの結末については、ランティモス監督は、いつものようにかなり含みのある展開を用意している。観てのお楽しみだ。

実は、「女王陛下のお気に入り」、アカデミー賞では、3人の女優賞の他に7部門(作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、衣装デザイン賞、美術賞、撮影賞)、計10の賞に最多ノミネートされている。作品賞ではアルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA/ローマ」と並んで、本命視されているが、果たしてどうなることか、発表は2月24日(日本時間25日)だ。

連載 : シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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