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2019.02.20

「薄いメッセージ性」が肝心!? クマもん、くんトン誕生秘話

イラストレーション=サイトウユウスケ


だから、繰り返しになるけれど、やっぱりキャラクターというのは「これをあてよう」などと考えてつくらないほうがいいと思う。くんトンも、何かのためにつくられたのではなく、「森井さんと一緒にキャラクターをつくりたい!」という僕の単純な想いからスタートした。譬えるなら、N35に新入社員がひとり増えたような、「これからみんなに愛されるといいな。ゆっくり育てよ」と願う感じだ。

思えば、事務所にずっとペットが欲しかった。犬か猫を飼って、みんなで愛着をもって育てようかなと。そんな“ペットを飼う感覚”、もしくは“新入社員を育てる感覚”でキャラクターをつくるといいのかもしれない。

今後の展開も、いまは皆目見当がつかない。意外とくんトンよりも違う子のほうが人気になったりするかもしれない。例えば「プリンセス・ショー・ユー」がキッコーマンと契約して、くんトンより先に有名になっちゃったりして(笑)。そのような妄想を自由にできるのも、自前キャラクターの楽しみ方のひとつだなと思う。

日本人のキャラクター好きは古来から!?

日本ほどキャラクターにあふれた社会は世界のどこにもないだろう。日本発のキャラクターを挙げろと言われれば、鉄腕アトム、ウルトラマン、ドラえもん、ポケモン、ハローキティ、アンパンマン、ゲゲゲの鬼太郎……とすぐにいくつか思い浮かぶ。

では、日本ではなぜこんなにたくさんのキャラクターが生まれたのか? それは古代から日本人がキャラクターの創作に長けていたからではないだろうか。“日本最古の漫画”と称される国宝『鳥獣人物戯画』しかり、おとぎ話の『桃太郎』や『鶴の恩返し』しかり。神社に行けば狛犬が必ずいて、お祭りでは龍が踊る。

八百万の神を信じる日本人は、擬人化にあまり違和感を抱かない人種というか、むしろそういうキャラクターがこの上なく好きな国民なのかもしれない。(僕が副学長を務める京都造形大学にもキャラクターデザイン学科がある!)結局キャラクターとは何かといえば、「この指と〜まれ!」の「指」そのもの。みんなが共感して集まってしまうような存在が、日本人が考えるところの「キャラクター」なのではないか。

そこで思いついた。国立キャラクターミュージアムをつくるのはどうだろう。ドラえもんもポケモンもピカチュウもアンパンマンもトトロも一堂に会す美術館があったらとても愉しいし、新しい観光名所として世界中から人が集まる気がする。

あとは、国がキャラクターに勲章を授与してほしい。どれだけ子どもたちを励ましたかを考えたときに、彼らは文化功労賞に値する(笑)。キャラクターの権利関係をもつ民間企業が互いにややこしいことを言わないためにも、国が率先してこの美術館をつくるのがよい考えだと思うのですが。

場所は東京の美術館が集まる上野に建てるのもいいし、移動式というのも考えられる。サーカスみたいに全国を巡業すれば、子どもたちがさぞかし喜ぶだろう。くまモンはたぶん招待されるとして、くんトンとその仲間たちも招かれるよう、これから大事に育てていこうと思います。

イラストレーション=サイトウユウスケ

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変えるデザイナー39」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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