日産は2月12日、2018年第3四半期(10~12月)の決算を発表。有価証券報告書に記載されていなかったゴーン被告の報酬、約8400万ドル(約92億8600万円)を費用として計上した。
いわゆる「ゴーン問題」は、日産にとっては複雑なタイミングで発生した。トヨタ自動車をはじめとする競合他社と日産は同様に、北米を含む幾つかの重要な地域で販売不振と減益に直面している。
世界的な販売台数の減少が予想されることを理由として、日産は今年3月期の通期業績見通しを下方修正。営業利益の予想をこれまで示していた5400億円から4500億円に引き下げた。また、売上高は従来予想の12兆円を11兆6000億円に修正。世界市場での日産のシェアは、前年比0.1ポイント減の5.9%となっている。
「良いニュース」は非常に少ない
アナリストらの間には、日産にとっての良いニュースを見つけるのは困難との見方もある。時価総額およそ334億ドル(3兆6900億円)の同社は、依然として世界中の投資家の注目を集める。だが、ゴーン被告を巡る一連の不愉快なニュースは、同社の経営陣に対する株主らの懸念を強めている。
日産の西川広人社長は、ゴーン被告の問題とは別に、企業連合(アライアンス)を組む仏ルノーへの抵抗を強めている。両社間の緊張を高めているのは主に、日産に対するルノーの出資比率が43%である一方、日産はルノーに15%を出資するにとどまり、議決権を持たないという複雑な構造から生じている。
ルノーの大株主である仏政府は、ジャンドミニク・スナール新会長が日産でゴーン被告が果たしてきた役割を引き継ぐことを支持。一方で西川社長は、これに反発している。
中国と米国における販売の低迷、近づく英国の欧州連合(EU)からの離脱(日産は英国内最大の自動車工場を所有)、電気自動車と自動運転車への巨額の投資によって自動車産業が変わろうとする中、西川社長が率いる経営チームは都合の悪いタイミングで、こうした問題を抱えることになった。
これらの問題は、自動車業界全体に脅威をもたらすものだ。だが、一部のアナリストらによれば、日産にとっては特に大きなリスクだ。西川社長もその他の経営幹部も、ゴーン問題とルノーとの関係という2つの問題に同時に対応しなくてはならないためだ。
調査・コンサルティング会社TIWの高田悟シニアアナリストはAFPに対し、日産が進む道は危険にあふれていると語った。
「日産の経営陣を取り巻く混乱は、長期にわたって続くことが予想される。同社とルノーが資本関係をはじめとする困難な問題について、合意に達することは容易ではないからだ」
また、「ゴーン被告のように、均衡を保った行動を取ることができる経営トップを探すのは難しい」という。
「こうした混乱が今後の日産の業績に直接的な影響を与えるのかどうか、注視していく必要がある」