ビジネス

2019.02.20

公募では熱意が伝わらない、自治体が優秀な人材を獲得する秘策

2016年4月に「ITイノベーション専門官」として登用された吉永隆之


さらに昨年7月、神戸市は、2人目の「ITイノベーション専門官」として、中沢久(37)を登用した。中沢は東京都出身で、東京大学を卒業後13年間働いたNTTグループを6月末で退職、神戸市に転職した。彼もこれまで神戸とは関係がない。


今月14日に開かれた神戸市の若手職員との交流会で話をする「ITイノベーション専門官」の中沢 久

今は、社会・行政課題にテクノロジーでメスを入れ、スタートアップ企業と市職員で新しいサービスを開発する国内で初めてのプロジェクトを担当しながら、「毎日が新しい。アドレナリン中毒の自分には快感だ」と周囲に語っている。

すでに外部人材を10名登用

市職員となって3年目となる吉永は、最近、メインの業務をこなしながら、市役所のさまざまな部署のテクノロジー導入をサポートしている。そのひとつが、救急車以外の方法で、緊急度が低い軽症の市民が病院に行ける仕組みづくりだ。「民間搬送サービスを予約手配する自動応答電話システム」を国内で初めて導入しようと、昨年9月、神戸市の消防局は、KDDIが行うアイデアソンに参加した。

ITベンチャーからの提案を吉永が技術的に評価し、消防局の幹部に何が決め手なのかを判りやすく説明。これを踏まえて、沖縄県の企業が選ばれると、開発が順調に進み、3月にはサービスが開始される。

消防局の担当者は、「採択企業とのウェブ会議に同席し、私たちがこうしたいと言ったことを、技術的にすぐ対応できるのか、あるいは難しいのかを、その場で教えてくれる。両者の持ち帰りが減り、開発期間が短縮できた」と話している。

現在、神戸市ではこのような外部人材として、すでに10名を登用し、彼らの良い評判は市役所のさまざまな部署に伝わっている。

今月8日、久元喜造市長が平成31年度予算を発表した。これには「東京で神戸の魅力を伝えるエバンジェリスト(伝道師)」、「戦略広報をリードするPRプランナー」などの外部人材を増員することが盛り込まれている。この春以降、活躍する彼らの姿をこの目で見られるのが、今から楽しみでならない。

連載 : 地方発イノベーションの秘訣
過去記事はこちら>>

文=多名部重則

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事