その一方で、ニューヨークが失うことになる2万5000名の雇用創出の機会を、多くの他の都市が待ち望んでいる。
アマゾンは当面の間は、ニューヨークに代わる候補地探しを再開しない方針だという。しかし、バージニア州北部での第2本社の一部の建設と、テネシー州ナッシュビルでの物流拠点の新設計画は続行し、米国とカナダの17拠点における採用は今後も継続すると述べている。
「昨年11月にアマゾンが第2本社の設立を宣言して以来、アマゾンやそこに関わるサプライヤーらは、密かに18都市の不動産物件の検討を進めてきた」と、不動産コンサルタントのJohn Boydは話す。同社がニューヨークでのプロジェクトを断念したことで、膨大な予算がそれらの都市に流れることになる。
Boydによると、恩恵を受ける都市にはニュージャージー州のニューアークや、マイアミ、ピッツバーグ、テキサス州オースティン、オハイオ州コロンバスなどが含まれるという。
なかでも有望なのは、アマゾンのオーディブル部門があるニューアークだという。ニューアークは強固なネットインフラを持ち、NYの中心部と比べると家賃は5分の1程度で済む。
ニューアークには他の大手企業も進出を進めており、プルーデンシャルやゴールドマン・サックスも、21階建てのNew Jersey Bellビルのリノベーションを行っている。また、プルーデンシャルを含む合弁企業が昨年、大型施設のGateway Centerの大部分を買収した。
さらに、アマゾンやサプライヤーが他に興味を持ちそうな地域としては、マイアミのイノベーションディストリクトや、ピッツバーグのRobotics Rowと呼ばれるエリアがあるという。
一方で、ニューヨークにおける、アマゾンの存在感が消える訳ではないとBoydは話す。アマゾンは現在5000名の社員をニューヨークで雇用しているが、ファッション業界やメディア業界に関心を持つ同社は、今後も現地での雇用を拡大する見通しだ。
「第2本社の計画が頓挫しても、アマゾンがニューヨークに見切りをつけることはない」とBoydは話した。