ビジネス

2019.02.15

日本とシリコンバレーを拠点にするVCが、いま「BtoB」に注力する理由

Courtesy of DNX Ventures

大企業とベンチャーが協業する「オープンイノベーション」は、リソースが不足しがちなベンチャー、時代の変化に即応できない大企業の双方に大きなメリットがあるといわれている。一方で、事業にシナジーを生み出す提携先を見つけ出し、企業の垣根を超えて活動するのは簡単ではない。

そんな問題を解決すべく、シリコンバレーと東京の2カ所を拠点として、日本の大企業と海外のベンチャーをつないでいるベンチャーキャピタル(VC)がある。「DNX Ventures(以下DNX)」だ。

2月13日、同社はそれまでの「Draper Nexus Ventures(ドレイパーネクサスベンチャーズ)」から通称名を「DNX Ventures(以下DNX)」に変更。また、3号ファンドの設立、運用開始を発表した。正式な規模は発表されていないが、250億円の規模を目指して活動していくという。

なお、3号ファンドには、京セラコミュニケーションシステム、ジェーシービー、東京海上ホールディングス、日立製作所、日立ソリューションズ、ファーストブラザーズ、みずほ銀行が出資している。

日本スタートアップの課題となる「BtoB領域」

DNXは2011年から活動しているアーリーステージVC。シリコンバレーのVCであるDraper Venture Network の一員として、東京とシリコンバレーの2カ所を拠点に活動してきた。

これまで日米合わせて80以上のスタートアップに投資、12社をイグジットに導いている。日本企業では、テーマ別に一括で株式投資できる投資サービス「フォリオ」を運営するFOLIOや、次世代型の電子薬歴システム「Musubi」を手がけるカケハシなどに投資してきた。

得意とする投資領域は、BtoB領域だ。近年、日本のベンチャーは数・投資額ともに拡大しているが、広く話題になるのはC向けのサービスがほとんど。

日本では学生が一念発起してスタートアップを立ち上げることが多く、大企業出身の起業家が比較的少なかったことなどが要因として考えられる。

「一方、海外では優れたBtoBスタートアップが次々と生まれており、それを大企業が買収することで一気にイノベーションが生まれています。近年は日本でも大企業出身の起業家が多く、こうしたケースを増えるのではないか」

そう語るのは、日本でマネージングディレクターを務める倉林陽だ。こうしたトレンドを読み、DNXでは先端テクノロジーに強いメンバーで組織を構成。SaaSやクラウドといったBtoB企業を重点的に支援している。

新設の3号ファンドでも、BtoB領域の日米スタートアップへの投資を進めていく。すでに投資(予定を含む)発表をしているのは、HR×SaaS領域で勤務シフト作成自動化サービス「Shiftmation」を運営するアクシバース、研究室・ラボ向け購買・在庫管理SaaSを提供するスタートアップのInner Resource、ドローンの自動運行管理システムを提供するトラジェクトリー、OKRコンサルティング・クラウドOKRツールを提供するResily、不動産/金融業界をメインターゲットとするSaaS BtoB向け情報プラットホーム「REMETIS」を運営するRESTARだ。
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文=野口直希

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