ビジネス

2019.02.15 17:00

日本とシリコンバレーを拠点にするVCが、いま「BtoB」に注力する理由



MIND AND I / shutterstock

日本企業に適したペースで「オープンイノベーション」進める

DNXのベンチャー支援は、ただ資金を投下するだけではない。出資企業とスタートアップを事業レベルでつなぎ、両社の成長につなげる。いわゆる「オープンイノベーション」を積極的に生み出そうとしているそうだ。

例えば、日立ソリューシュンズなど日本の出資企業は、人工知能アルゴリズムを活用したアメリカのサイバーセキュリティベンチャー「サイランス」の販売代理店にもなっている。投資関係だけでなく、ベンチャーサービス販売経路も担っているのだ。

こうした背景にあるのは、彼らの拠点であるアメリカでは、大企業とベンチャーの協業がより盛んだからだ。とはいえ、日本企業が必ずしもアメリカの後追いをすればいいとは限らない。

日本でマネージングディレクターを務める中垣徹二郎は、DNXではまず日本の大企業に対して、ベンチャー企業との関係性構築の指導から始めることもあるという。

「株主から時価総額へのコミットを強く求められるアメリカ企業では、売り上げ・人材を含めたスタートアップの買収が非常に重視されています。特に多くのICT企業では、コーポレート・ディブロップメントという事業買収を専門にした部署が存在するほどです。

こうした風土がない日本企業にいきなりM&Aを推奨するのは難しいでしょう。まずは投資、あるいはスタートアップの付き合い方を考えるところから始めるなど、やり方は色々あります。人材教育も含めて企業のステージに応じたオープンイノベーション支援を提供したいですね」

「いまや日本のベンチャーの技術力は、シリコンバレーに劣らない」

現在、DNXのメンバーは12名。日本の大企業と協業の方法を模索する一方で、うち7名はアメリカを拠点に活動。日夜、現地のベンチャーを視察しているという。

そんな彼らの目に、日本のスタートアップはどう映っているのか。アメリカでマネージングディレクターを担当するQuaeed Motiwalaから、シリコンバレーと比較した日本のスタートアップ環境を語ってもらった。

「10年前に同じ質問をされたら、『シリコンバレーの起業家は最初からグローバルな視点をもって高い技術力を武器に起業するが、日本の起業家はそれほど技術力の高くない、サービス関連のスタートアップを起業する傾向にある』と答えていたでしょう。

しかし、いまや状況は大きく変わりました。日本からも宇宙分野、ロボット、ドローンなどの高い技術力が必要になるスタートアップ企業も台頭しており、彼らはシリコンバレーの企業と変わらない技術力をもっています。

東南アジア、中国、インドなどの海外市場への進出も視野に入れている日本のスタートアップが増えていることを、嬉しく思います。DNXとしては、引き続きそうしたグローバルな視野をもった日本人起業家をサポートしたいですね」

文=野口直希

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事