ビジネス

2019.02.15

米フードデリバリー業界で勃発した「チップ論争」の行方

svershinsky / Shtterstock.com


最低賃金が保証されない労働者たち

「チップは、必ずしも従業員に対する謝礼ではなく、多くの場合は企業にとって賃金の補助金という意味合いが強い」とAllegrettoは話す。

このようなチップの概念は、ドアダッシュやインスタカートなどの新興企業が作り出したものではなく、「subminimum wage」や「tipped wage」と呼ばれ、古くから米国に根付いている。

連邦政府の規定では、レストラン従業員のようにチップをもらえる労働者の場合、雇用者は連邦最低賃金である時給7.25ドルではなく、2.13ドルを支払えば良いと定められている。また、チップを加えても7.25ドルに満たない場合は、雇用主が差額を支払わなければならない。

米国のシンクタンク「Economic Policy Institute(EPI)」によると、全米18州が2.13ドルのtipped wageを採用しているという。これらの州の中には、連邦最低賃金より高い最低賃金を設定しているケースもある。例えば、ネブラスカ州の最低賃金は9ドルだが、チップを受け取る労働者は2.13ドルとなっており、約7ドルはチップで補うことになる。

一方、ドアダッシュとインスタカートが本拠を置くカリフォルニア州を含む8州はtipped wageを撤廃しており、企業は労働者に対してチップとは別に州が定めた最低賃金を支払わなければならない。

問題は、ギグエコノミーの配達員は独立契約者であり、最低賃金法によって保護されていないことだ。独立契約者の報酬は企業任せになっており、多くの場合はタスクごとの所要時間や距離、労力に基づきアルゴリズムによって算出されている。

ニューヨーク州のように、リフトやウーバーなどの企業に対し、独立契約者に対しても最低賃金を適用するよう求める州も出始めている。今回の騒動をきっかけに、ギグエコノミーに従事する労働者の保護を巡る議論がさらに活発になるかもしれない。

Allegrettoによると、法律が追いつくまでの間、配達員が確実にチップを受け取れる方法があるという。「それは、ユーザーがチップを現金で支払うことだ」と彼女は述べた。

翻訳・編集=上田裕資

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