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彼がまず着手したタスクは、チーム作りだった。彼は政府の案件ながらも公募・入札形式にはせず、信頼できるフォトグラファー、コピーライター、グラフィックデザイナーらクリエイターらを集めコンセプトやメッセージ、デザインを固めていった。小国が生き残るにはどうすればよいか、彼らによって考えられ、策定されたコアメッセージが3つ。「Independent minds」「Clean environment」「Digital society」だ。それをもとにロゴなどに落とし込んでいった。

「国のブランディング」のジレンマ

2つの失敗を乗り越え順風満帆に進んでいたプロジェクトだったが、ここで3つ目にして最大の失敗を経験する。それは、17年1月、Brand Estoniaが手がける新コンセプトの発表会見でのこと。オラヴらはこの会見をプロジェクトの中間発表のような場と捉えていた。しかし、紹介したサンプルロゴのひとつを、メディアが新しいロゴと誤認。「税金の無駄遣いだ」と痛烈に批判を受け、国民もそれに便乗し厳しい声が相次いだ。

オラヴは「国民から一定程度の理解を得ること、つまり内向きの視点も必要だった」と省みる。それでも、「海外に浸透しやすいコンセプトを打ち出すことが重要」と外向きの視点の必要性を強調。その後は透明性を確保しながらも、当初のプランに沿って活動を継続した。

こうして誕生したのが「Toolbox Estonia」だ。同サービスは、Brand Estoniaのメンバーらが手がけたエストニアに関する写真、動画、アイコンなどの素材を無償で公開しているプラットフォームだ。現在では複数の政府機関やカンファレンスなどで利用されており、タリンの空港や港でも政府公式フォントでデザインされた“Welcome”ボードが観光客を迎え入れてくれる。

このように幾多の試練をチームと共に乗り越えてきたオラヴだが、現状には満足していない。「エストニアは小国で、常にリソースが不足している。そんな小国が世界に名を轟かせるには、クレイジーな挑戦を続けなければならない」と話すその表情は明るい。

「これからも政府やスタートアップと連携して、エストニアブランドを確立し続けていきたいね」


アラリ・オラヴ◎Brand Estoniaのデザインチームリード、自身のデザインファームAKUパートナー。

文=齋藤アレックス剛太 写真=カーレル・カラ

マツダ

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