中国IT大手が人工知能で「食料」生産 水量90%削減の例も

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農業・畜産など食料生産の工程を自動化・効率化するため、中国大手企業が人工知能を使ったソリューションを次々とテスト・実用化しようとしている。アリババが養豚のためにAIを活用していることはすでに広く報じられているが、AI利活用の裾野はさらに広がりを見せている。

テンセントAIラボは昨年、オランダ・ヴァーヘニンゲン大学が主催した「Autonomous Greenhouse Challenge」に参加。同大会は、人工知能技術だけをもって作物を栽培するという、非常にユニークな大会だ。参加者は、ディープラーニング技術を使った演算で、食物に水や肥料を与えたり、換気、光量調節を行う。

テンセントAIラボは4カ月の大会期間中に、61平方メートルの面積の温室で約3500kgのキュウリを育て「AI戦略部門」で1位、総合2位を獲得している。(1位はマイクロソフトSonomaチーム)。この3500kgという数字は、人の栽培量よりも5倍ほど多い量だ。興味深いのは、人工知能が学習を重ねることで、より優れた栽培環境を生み出していけるという点である。

なおテンセントは、貴州省・貴安新区で「AIガチョウ農場」も運営している。昨年オープンした同農場に集められたガチョウは当初5000匹だったが、今後20万匹まで個体数を増やしていく方針だという。農場では、テンセントが独自開発した「T-block技術」で温度と湿度を自動調節。また各ガチョウを顔認証技術で認識し飼育効率を引き上げている。

まゆつばものであるが、テンセントの翻訳チームが、ガチョウの言葉を通訳するソフトウェアも開発しているという報道もある。

EC大手の京東も「AI植物工場」を運営している。人工知能が、温度、湿度、光量、二酸化炭素能動などを調整し環境を最適化するスマート栽培施設で、害虫被害の心配がなく、農薬や肥料も必要ないとのこと。1万平方メートルにも満たないが、収穫できる野菜の年間量は300トンに達するという。こちらも、従来の栽培方法より収穫量が数十倍も多いのだが、水資源は反対に90%以上削減できるという。

「京東は配送ロボット・ドローンなど、物流を最適化するテクノロジーを数多く開発していますが、やはりAIの開発には特別大きな力を注いでいます。中国の各企業は、あらゆるシーンにおいて使用できる人工知能が、今後、競争力の源泉になると信じて疑っていません」(京東関係者)

今後、中国大手企業はどのようなシーンにAIを投入してくるのか。特にリアル空間におけるユースケースや応用例については、日本で同様の取り組みが行えるかは別として、ウォッチするだけでも価値が非常に高そうである。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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編集=フォーブスジャパン編集部

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