過小評価されるマネジメント資産、それは「共感」

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私は、過去に経営大学院で受講したどのコースでも「共感」という言葉を聞いたことはなかった。しかし私に言わせれば、共感はマネジメントにおいて価値のある資産であることは間違いない。

これは単に、筆者が持つ変わった意見の一つではない。人材開発サービス提供企業DDIが行ったマネジメント調査の結果では、共感が「パフォーマンス全体を向上させる最も重要な原動力」となるとの結論が出されている。

同調査で注目すべき点として、「最前線のリーダー」のうち、共感に「熟達している、または強い」との評価を受けた人はわずか40%だったことがある。つまり、効果的なマネジメントに関連するスキルと、実際に管理職が持つスキルとのミスマッチが起きているのだ。共感力は有用であるにもかかわらず、不足していることが多いのが現実だ。

別の視点

筆者も寄稿している心理学誌サイコロジー・トゥデーでは、共感を「他人の考え、感情、状況を、自分自身でなくその人の視点から理解する経験」と定義している。

ではなぜ共感がマネジメントにとって重要なのだろうか? 単純な理由としては、マネジメントの目的は他の人が出し得る最高の成果を引き出すことだからだ。他人のモチベーションを上げたり、問題行動を正したり、その人が抱えているかもしれない問題を見抜こうとしたりする場合、自分の立場からだけではなく、その人の視点に立ってものを見ることが役に立つ。

筆者は常々、良きマネジャーは良き心理カウンセラーでもある、と言っているが、これはそのほんの一例にすぎない。

コントロールばかりで共感が不足

現在では多少変わっているかもしれないが、私の経営大学院時代(恐竜時代と氷河期の直後までさかのぼる大昔の話だ)ではどのコースでも「共感」という言葉を耳にしたことはなかった一方で、「権威」は100回くらい、「コントロール(制御)」に至ってはおそらく300回は聞いただろう。確かに権威と制御に勝るものはない。権威と制御なしにはマネジメントは成り立たず、無秩序状態になってしまう。だが、共感なしに権威や制御にばかりに集中していると、自分が管理する人々を遠ざけてしまう危険性がある。

共感は、マネジメントにおいて私たちがほとんど意識しない特性のひとつだ。だが大半の組織では、優秀な管理職の多くがその特性を十分に持ち合わせているに違いない。

編集=遠藤宗生

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