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ドナルド・トランプ米大統領(Photo by Joe Raedle/Getty Images)

ドナルド・トランプ米大統領は先日の一般教書演説で、対メキシコ国境に壁を建設すれば、麻薬カルテルと関連の犯罪者たちがビジネスを継続できなくなると主張した。この言葉は、麻薬カルテルのリーダーたちを驚かせたことだろう。というのも、トランプ政権の難民政策はすでに密入国業者に恩恵を与えており、壁建設はカルテルのビジネスにとってはさらに好都合となる可能性が高いからだ。

トランプ大統領は同演説で「米議会は今こそ、米国が不法入国に終止符を打ち、冷酷なコヨーテ(密入国あっせん業者)やカルテル、麻薬密売人、人身売買業者を廃業させることを目指していると、世界に示さなければならない」と述べた。しかし、カルテルの行動を分析した専門家らは、トランプ政権の移民政策が逆効果になるだろうと結論づけている。

英経済誌エコノミストの元メキシコ市支局長で、『ハッパノミクス 麻薬カルテルの経済学』の著者であるトム・ウェインライトは「警備を強化することで国境越えは今より幾分難しくなり、いくつかの影響が生じる。しかし、そうした影響はおそらく、トランプ大統領が意図したものにはならない」と説明する。

「さらに多くの不法移民がプロの犯罪者に助けを求めるようになり、こうした密入国業者が要求する料金は上がる。現在の国境越えには熟練が必要だ。これはつまり、かつて素人のビジネスだった分野に麻薬カルテルがすでに進出し、時には密入国のためトンネルを貸し出していることを示している」(ウェインライト)

ウェインライトは、米国入りによる経済・安全面でのメリットを考えると、密入国あっせんはもうかるビジネスであり、壁を建てればその利益がさらに高まると指摘している。「『高く、強力で、美しい』壁を自然の真ん中に建てれば、主に密入国あっせん業界の利益が膨らむだけで、トランプ大統領が入国阻止を宣言する“悪人たち”の懐を肥やしてしまうだけだ」とウェインライト。「誰がその資金を出すことになろうとも、賢い金の使い方ではない」

こうしたシナリオは現在、米国とメキシコの国境で展開されている。個人が正規の国境検問所に入り難民申請をすることは合法であるにもかかわらず、トランプ政権はそれを許していない。その代わり、検問所付近で人々の「メータリング(制御)」を行い、1日当たりの難民申請者数を少数に抑えている。

また、トランプ政権は「メキシコ残留」と呼ばれる方針を採用し、難民申請者を米国から退去させ、申請の結果が出るまでメキシコで待たせることとした。これにより、難民申請者は自身の申請に対する判断を「数カ月あるいは数年」メキシコで待たなければいけない可能性がある。

編集=遠藤宗生

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